63.劣等感 ページ25
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「八百万！なんでもいい、常に何か小物を創り続けろ。創り続けられなくなったら相澤先生が近くにいると考えろ。」
開始の合図とともに、3人で走り出す。
「この試験どっちが先に相手を見つけるかだ。視認出来次第、俺が引きつける。真宮は俺の援助を頼む。そしたら八百万は脱出ゲートへ走れ。それまで離れるなよ。」
走りながらテキパキと指示を出していく轟くん。隣を走るヤオモモは何か言いたそうな顔をしているものの、口を噤んだままだった。
「轟くん。個性出せる？」
「今か？」
「ほんのわずかでいい。吸収しとく。」
「わかった。」
左側から微かに出た炎に手をかざし、吸収する。実際には攻撃を受けていなくても、相手が出した個性に触れれば使えるようになるのだ。
「さすがですわね轟さん…。」
「なにが。」
「相澤先生への対策をすぐ打ち出すのもそうですがベストを即決できる判断力です。」
「……普通だろ。」
「普通…ですか…。」
ヤオモモの一言一言から、轟くんに対する劣等感を感じているのが伝わってくる。私から見たら十分2人とも優秀だが、彼らの目指す先はもっと遠いのだろう。
「ヤオモモ、マトリョーシカ…。」
いつの間にか、周りに何も落ちていないのに気がつく。轟くんもそれに気がついたのか、周りを確認し出した。
恐らく、相澤先生が来るとしたら上から。なるべく高いところに行かなきゃ。
「来るぞ！！」
「すみませ…」
「と思ったらすぐ行動に移せ。」
「ちっ！」
どこからともなく現れた相澤先生に対し、轟くんは氷結で対抗しようとするものの、すでに先生に個性を使われており、何も出ない。
その一瞬で捕縛布を巻きつけられた。
「八百万、行け！」
「あ、そういうあれか。なら…好都合だ。」
「痛っ……!?!⁈」
相澤先生は轟くんを引っ張り上げ、電線に吊るす。それを電柱に結びつけている隙に、私は後ろから先生に向けて飛び込んだ。
「真宮か。」
「…っ！」
読まれていたのか、片足を捕縛布で縛られる。
自由なもう片足で近くの壁を蹴り、先生と視線を合わせないようにしながら轟くんの炎を目眩しがわりに先生の目に向けて放った。
先生が避けた瞬間に、足の捕縛布を燃やして千切り、壁や家の屋根を蹴りながら轟くんの元へと飛び上がる。
だが、途中で捕縛布によって再び動きを封じられる。燃やそうと振り向くと、目の前には相澤先生が佇んでいた。
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作者名：レモネード | 作成日時：2023年12月22日 22時
