61.大きな音 ページ23
＊
「マイク、一回真宮に向けて個性使ってみろ。」
「了解したぜ！」
相澤先生の指示で、マイク先生が私に向かって個性で増幅させた少し大きな音を出した…らしい。
私にはいつも通りの声の大きさに聞こえるが、脳内に先生の個性の情報が流れてくるため、影響を受けたのだろう。
「使えるか？」
「分析と調整は終わりました。いつでも使えます。」
「じゃあやるか。」
マイク先生の個性を使って少し大きな音を出しながら、相澤先生と視線を合わせる。
「…普通の声に戻ったな。マイク、一度個性を……。」
相澤先生がマイク先生の方を向いた後、慌てて私と目を合わせ直す。一度瞬きをして、少し何かを考える素振りをした後、再び私と視線を合わせた。
「真宮、止めろと言うまで声を出してろ。」
言われた通り、向かい合った状態で声を出し続ける。それはもちろん、先生が他の方向を向いても続けた。
「止めていい。マイク、個性使え。」
「え、俺ェ！？」
先ほどまでなかった躊躇いがマイク先生に見られ、頭が混乱する。一体何が起こっているのだろうか。
どうやら相澤先生は再び私と目を合わせてから瞬きをしていないらしく、早くやれと急かしている。
「OKリスナー、気をつけろよ。」
「…？はい。」
Heeeeey!と言い続けるマイク先生。普段と変わらない声量に相澤先生の思考回路がわからず首を傾げていると、先生と私の視線が交わった。
その途端。
Heeeeeey!!
「！？」
突然耳に響く大きな音に、思わず耳を塞ぐ。体を縮こませ、相澤先生から視線を逸らすとマイク先生の声は元のボリュームに戻った。
「悪い、大丈夫だったか？」
「一応……。」
久しぶりに、他人の個性を感じた。自分の個性が発言してからは受けることのなかった感覚に、戸惑いを隠せない。
「どうやら、俺と完全に目が合っている時は真宮の個性が使えなくなるらしい。」
「驚かせて悪かった！！」
「なる、ほど…。」
先生たちからは必要以上に謝られ、念の為保健室によって帰ることになった。リカバリーガールからは耳には特に問題がないと言われたが、頭の中にはマイク先生の叫び声が忘れられず残っていた。
【補足】
誰かの個性を使う時は、Aの体の適した部分からその個性が現れます。ジロちゃんのイヤホンジャックなら耳たぶからイヤホンジャックが。13号先生の個性なら指先を変化させて吸い込みます。
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作者名：レモネード | 作成日時：2023年12月22日 22時
