54.助ける ページ16
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出久が送って来たあたりまでたどり着いたものの、ビルが立ち並ぶこの通りには路地裏と呼ばれる場所が何ヶ所もあった。
「どこ？」
「なりてぇもんちゃんと見ろ！！」
「轟、くん…？」
聞き覚えのある声が聞こえてくる。恐らく、ここからそう離れてはいないだろう。
一瞬耳を掠めた声を頼りに、近くの路地裏を覗きつつ走る。ある一つの場所に差し掛かった所で、周りより気温が下がっていることに気がついた。
これは轟くんの個性の影響…？
急いで角を曲がると、目の前には3人の倒れている姿と、1人戦う轟くんの姿。
「見つけた…！」
「Aちゃん！？」
奥に倒れ込む出久が、私の声にいち早く反応する。倒れているのは3人、出久と、飯田くんと、それからプロヒーロー。
舞菜さんに一報を入れ、目の前の状況と向き合う。
見た感じ、1番重症なのはプロヒーローのようだった。彼がやられているところに飯田くんが来て、その後に出久か轟くんが来たのだろう。
救助優先！！と舞菜さんに釘付けされているため、まずは彼らを助けるべきだろう。
「轟くん！まだ持ち堪えられそう！？」
「真宮か！なんとかしてみせる！」
私と轟くんの距離は5mほど離れている。見かけによらず、距離がある道らしい。
未だ倒れ込むプロヒーローのもとに駆け寄り、声をかける。
「あの、大丈夫ですか？」
「ああ、なんとか…。でも動けない！アイツの個性だ！！」
「個性…。」
鍛えていると言えど、身動きの出来ないヒーローを1人で運べるほどの力はない。申し訳ないけど、引きずって行くしかないか。
「すみません、引きずります。」
片腕を自分の肩に持って来て、気合いで引きずる。やっぱりヒーローなだけあって、他の人の何倍も重たい。
「俺はいいよ！それより君も逃げた方が…！」
「人を助けるのは悪いことですか？」
私の一言に、黙り込むヒーロー。彼を路地裏の入り口まで運んだ所で、次は飯田くんを助けようと振り向いた。
私が来る前、轟くんが叫んでいた言葉に触発されたのか、飯田くんは自分で立ち上がり、敵に向かって蹴りを入れていた。
今動けていないのは、出久だけ。
今度はそっちに駆け寄ると、敵に声をかけられた。
「すぐに戦わず、まず人助けとは…ヒーローの鑑だな。助けようともせずに俺に刃向かったコイツとは訳が違う。」
コイツ、とは飯田くんの事だろう。
ああつまり、この敵がヒーロー殺し"ステイン"か。
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作者名：レモネード | 作成日時：2023年12月22日 22時
