52.私にとって ページ14
＊
「私にとっては2人とも同じくらい大切なんです。」
昔から幼なじみ、というだけでどっちが好きなの？とか、付き合うならどっち？なんてよく聞かれたりした。
でも、私の中ではそれぞれとの空気感があるというか、"どっちの方が"というのは決められないのだ。
「なるほどねぇ。それは良いことだ！」
お腹がいっぱいになり、どこか上機嫌な舞菜さんはにこにこしながら私を見つめて、話し始めた。
「うん、どっちも大切なのはすごく良いことだよ。だから、どっちがなんて決めなくて良いし、恋愛感情も、そこにあっても良いし、なくても良いんじゃない？」
"Aちゃんが決めれば良いよ。"
舞菜さんの一言は、私の考えをあっという間に変えてしまった。
私たちの関係がすぐ恋愛に結びつけられるのが嫌だった。でも、そんなんじゃない、と決めつける私の方が縛られていたのかもしれない。
「このまま夜更かし！と言いたいところだけど、Aちゃん疲れてるだろうし、寝よっか。」
「そうですね。お話聞いてくれてありがとうございました。」
「こちらこそ！いつでも相談乗るからね。」
布団に入ると、自分が思っていたよりも疲れが溜まっていたのか、すぐに眠気に襲われる。瞼が完全に閉じかけた時、携帯の鳴る音が聞こえた。
「メッセージ、か…。」
出久からで、私の職場体験を気にしているようだった。勧めてくれたのは出久だから、気になるのかな。
重くなる瞼をなんとかこじ開けて、出久に一言感想を送る。送信のボタンを押したところで、私の記憶はプツンと切れた。
「Aちゃーん！朝だよ！起きてー！！！」
「ん…。」
目を開くと、私のそばに座り込む舞菜さんの姿が見えた。どうやら、自分でかけたアラームが聞こえない程に熟睡していたらしい。
眠い顔を起こすため、冷たい水で顔を洗う。コスチュームに着替えようとしていると、舞菜さんが慌ててこちらにやってきた。
「Aちゃん、今日はパトロール午後に行くから、先に特訓する！」
「あ、わかりました。」
手に持っていたコスチュームを掛け直し、道着を手に取る。着替えを終えてダイニングの方へ行くと、舞菜さんが朝ごはんを用意してくれていた。
「1日ごとに、午前と午後を変えてパトロールしてるんだ。朝だけじゃなくて夕方の様子も見ておきたいからさ。」
自分の担当区域を常に把握しておきたい、ということらしく、ヒーローってすごいなと改めて思った。
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作者名：レモネード | 作成日時：2023年12月22日 22時
