○●ビスケット●○ARS・Sakurai Part3 (ページ14)

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潤の乗ったバンが

完全に見えなくなってから

階段を上りアパートの中へ入ると

真っ暗な部屋は

あたしが事務所へと出掛けたときのままだった。

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急いで電気を点け

冷蔵庫に貼り付けてあるホワイトボードの

今日の日付のところに目をやると

【翔：バイト休み】

と乱雑な文字で書かれていた。

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時計の針は

まもなく午後９時を指そうとしている。

大学なんてとっくに終わってる時間だし

バイトでもないみたいだし

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なのに家にいないなんて…

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あ「もう…帰って来ないのかな…」

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力なく柱にもたれかかり

膝を抱えて小さくうずくまると

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あ「うっ…うぅ…ふっ、、ふぇ…っ…」

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涙が

溢れ出した

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ガチャ…

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そのとき

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翔「ただいまー。」

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……ほよ？(´；ω；｀)

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両膝にくっつけていた

涙でグチャグチャの顔を

思わず上げると…

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翔「A…さっきはごめｎ」

あ「(´；∀；｀)ﾊﾟｱｯ☆」

翔「…って、えぇ？！お前泣いてんの？！Σ(゜Д゜;)」

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目の前に

櫻井さんが立っていた。

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翔「ごめん！さっきはマジで言い過ぎた！」

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『櫻井さんが、もう帰って来ないんじゃないか』

そう思って流した涙だったのに

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あ「うぅ…うぐっ…ふ…っ…」

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櫻井さんがこうして帰ってきても

一向に止まる気配がない。

・

体育座りのあたしの前に

櫻井さんはあぐらをかいて腰を下ろした。

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翔「ほんとこのとーりっ！(＞人＜;)だからもう泣くなって！」

あ「あ、あた、しもっ…泣き止みっ…たいんで、すけ、ど…ｸﾞｽｯ」

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必死に顔の前で手を合わせる櫻井さんを見ながら

あたしもなんとか涙を堪えようとするんだけど…

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しょうがないよ

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だって

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嬉しいんだもん

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翔「そうだ！…ティッシュティッシュ…」

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焦りながら

ジーパンのポケットに手を突っ込む櫻井さん。

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すると

櫻井さんの掌に包まれて出てきたは

ティッシュ…ではなく

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翔「なんで…？」

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一枚の

ビスケットだった。