○●57●○ ページ11
シズカちゃんの言葉は
きっと
あたしにとっては
すごく
甘美な響きを持ち合わせていたに違いない。
.
.
.
あ「『最後』って…？」
シ「元彼とより戻ってさ。そしたら『辞めてくれ』って言われちゃって…////」
あ「そう…」
シ「困るよね〜。他に仕事探さなきゃだし。」
.
口ではそう言いながらも
シズカちゃんの表情は
とても幸せそうだった。
.
潤「シズカさん、着きましたよ。」
シ「じゃあねジュリちゃん、バイバイ♪」
あ「バイバイ…」
.
あるホテルの前でシズカちゃんを降ろしドアが閉まると
車内はあたしと潤の二人だけになった。
.
自分ももうすぐだろう と
座席シートの隅に転がっていたバッグを
膝の上へ置き直し降りる準備をする。
.
なのに車は
せっかく入ったラブホ街を
通り抜けてしまった。
.
あ「潤、どこ行くの…？」
潤「ジュリさん、顔色すっげー悪いっすよ。」
あ「え…？」
.
身を乗り出し
慌ててバックミラーで確認するけど
暗い車の中では
そんなことよく分からない。
.
あ「あたしほんとに顔色悪い？」
潤「もう真っ青。宇宙人みたい。」←棒読み
あ「う、うちゅ…？！」
潤「だから早く…」
.
そうそう
すっかり忘れてた。
.
潤「早く家に帰りましょう。」
.
潤はとっても
.
あ「お節介焼き…(笑)」
.
後姿に投げかけると
彼は振り返らずに
ふふっと笑った。
.
『今すぐ櫻井さんに会いたい』
.
心の中で叫んだ言葉は
潤には聞こえていたようだ。
――――――――――――−…
潤「マイさんには俺がテキトーに言っときます。」
あ「ありがと。」
潤「それじゃ…」
.
アパートの前に着くと
軽く会釈をして
潤は去って行った。
.
次第に小さくなっていく車を見送りながら
あたしはさっきの
シズカちゃんの笑顔を思い出す。
.
彼女が羨ましくて
今まで抑えてきた
自分の“欲”が
少しずつ
顔を出し始めたのが分かった。
.
馬鹿馬鹿しいにも
程がある。
.
智と一緒にいるためにしている
この仕事を
.
櫻井さんと一緒にいるために
辞めたいだなんて…
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作者名：ちず
| 作成日時：2011年4月23日 18時
