震えている手 ページ2
アーヤが倒れて行くのを、僕はただ見ていることしか出来なかった。
それでも上杉と黒木はすぐに動き、二人の傘が宙を舞う。
すぐに黒木が、アーヤを抱きとめた。
そして黒木がアーヤの額に手を伸ばす。
額に触れようとしたが、ふと、その手を止めた。
そのまま、自分の手を見つめ、固まっている。
黒木………?
その手は、僅かに震えていた。
すると上杉が黒木の肩に手を置き、首を横にふる。
黒木は頷き、アーヤの身体を上杉に預けた。
上杉はアーヤの額に手を当て、小さく声をあげる。
「っ、あついな……。」
僕はドアに近づき、ドアを開けた。
そして上杉はアーヤをお姫様抱っこすると、僅かに眉をひそめる。
「………、……。」
?
小さく、何かをつぶやいたようだけれど、僕にはその言葉を聞き取ることが出来なかった。
僕達はアーヤの家に上がらせてもらい、上杉がそのままアーヤを寝かせに行く。
それ以外の三人で居間に入って、椅子に座った。
全員、一息つく。
少しして上杉が来たが、タオルを探して濡らし、すぐに階段を上がっていった。
全員無言のまま、上杉が来るのを待つ。
上杉が居間に入ってきて、椅子に座った。
それを見て、若武が口を開く。
「……手強かったな。」
上杉も頷いた。
「ああ、すげぇ頑なだった。」
僕は考え込む。
「どうしてあんなに尖ってたんだろ。あのアーヤが。」
そう言いながら、ふと、黒木を見た。
黒木はテーブルの上で手を組み合わせ、それに顔をうずめている。
…………黒木。
そんなに感情を露わにするのは、黒木らしくないよ。
でもそれは多分、黒木が普段どれだけ感情を抑えているかを表しているのだと思う。
黒木は、哀しいくらいに大人なんだ。
そう考えていた僕の耳に、上杉の硬い声が届いた。
「なぁ、おかしいと思うんだけど。」
若武が上杉に向き直る。
「何がだよ。」
若武にせかされ、上杉は口を開いた。
「さっき、ああ、立花を持ちあげた時な。少し、違和感を覚えたんだ。」
違和感?
僕は身を乗り出す。
「すげぇ、軽かった。」
それを聞いた途端、若武は口を尖らせた。
「何だよ、たいしたことじゃねーじゃん。見た目からして、アーヤは軽いだろ。」
上杉は若武を睨みつける。
「違う。さっきの立花は、異常な程に軽かったんだよ。」
194人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yuzuka - とっても面白かったです。また色んなお話を書いてください!応援してます (2022年11月2日 20時) (レス) @page45 id: 81843b67d7 (このIDを非表示/違反報告)
ぱんだ - めっちゃ面白すぎて今4周しました!これからも頑張ってください! (2022年8月16日 16時) (レス) @page45 id: 09838c8ac8 (このIDを非表示/違反報告)
柚菜 - あーー、感動しましたいいお話をありがとうこれからも頑張ってください (2022年1月15日 13時) (レス) @page44 id: 1216b927b2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - お返事ありがとうございます^^*もちろんです!お待ちしています! (2021年4月30日 0時) (レス) id: 7efce59d5b (このIDを非表示/違反報告)
HUMA(プロフ) - ゆいさん» ゆいさんコメントありがとうございます。嬉しいです。あと本当にもう少しなのでどうにか終わらせたいです。最後までどうかお付き合いいただければ幸いです。 (2021年4月29日 23時) (レス) id: 75b28dedc0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:HUMA | 作者ホームページ:https://odaibako.net/u/potage1314
作成日時:2016年7月11日 9時