あけおめ〜! byこたつむり ページ23
「あけおめー!」
「はいはいあけおめあけおめ」
「ちょ、ちゃんと聞いとった?」
「聞いてる、聞いてるよ」
スマホを見ていたら、玄関からガチャリ、音がなった。テンションの高い明るく、かわいい声が飛んできたと同時に、背中に衝撃が加わる。
赤髪の、心做しか犬の耳と尻尾が見えるような立派な成人男性の名前は坂田という。
幻覚の尻尾を振るな、尻尾を。
なんて考えながら適当にあしらう。歌い手「となりの坂田。」として立派にやっている一面、リスナーの「坂田家」なる人に絶大な支持を受けている。
背中が痛い。そう思っていると、慌てたように尋ねてくる。
耳と尻尾をうなだれさせるな、しゅんとするな。罪悪感が増すだろう。
かと言ってまともに言ったら調子に乗りそうだ。
坂田の言葉に適当に返すと、聞いとらんやろ、という言葉とともに、ギチギチと音が鳴り出す。
ギチギチギチ。その音と比例するように腰回りがどんどん締められ、痛くなってくる。
「離せ……!」
「嫌や……!」
坂田の腕に手をかけ、はずそうと試みる。
まぁ、失敗に終わるのだけれど。
十回くらい同じ事を言う。
離せ、嫌や、離せ、嫌や、なんて堂々巡りの言葉を言い合った。
抜け出せないし、離す気はサラサラなさそうだし。
「いいから離して、きらいになる」
「……! それはいやや!」
ハァ、と大きなため息をこれみよがしに見せ、ナメクジを見るような目で見る。
おれの言葉を聞いた坂田は、勢いよく手を離し、嫌いにならんといてぇ……と瞳をうるうるさせながら懇願してくる。
う、と思わず言葉に詰まってしまった。
坂田家に刺されたくはない、まだ生きたい。
「お年玉……」
「同じ年齢のやつにあげるお年玉はありません」
坂田もおれもいい歳した(30)の成人男性だ。
お年玉なんて親から貰えない歳だ。
何なら、もう甥だったり、姪だったり、息子だったり、娘だったりにあげなきゃならない。
一人っ子で未だいい人すらいないのがこういうときだけ良かったと思ったりしてしまう。
いや何ら良いことはないのだけれど。
周りからと親からの重圧がキツい。
いっそのこと恋人でも作ってしまおうか。
「なぁ、」
俺を放って何を考えとるん? と近くで囁かれた。
思わぬ不意打ちに肩が跳ねると、先程まで瞳をうるうるさせていた純粋なやつはどこへ言ってしまったのか。
勝ち誇ったような、満面の笑みを浮かべてこちらを見てくる。
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月夜(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます〜!文才の神みたいな作者さんがいっぱいなので楽しんでくださいね^^ (4月15日 9時) (レス) id: 316f75b05d (このIDを非表示/違反報告)
m - 初コメ失礼します、!なんか、その、んと.. 凄く好きです!!語彙力が乏しくてなんか変になっちゃった..ww具体的に好きな理由を言語化できないけどとにかく好きです! (4月3日 21時) (レス) id: de8cd53295 (このIDを非表示/違反報告)
月夜(プロフ) - こたつむりさん» わ!!!こっちゃん!!!久しぶり!!意味深な笑い怖すぎる (4月3日 5時) (レス) id: 34cc6412e1 (このIDを非表示/違反報告)
こたつむり(プロフ) - 月夜さん» お久しぶりにお顔出しましたね…………ふふふ (4月3日 3時) (レス) id: e89ed18301 (このIDを非表示/違反報告)
月夜(プロフ) - ひゃー懐かしい (3月22日 14時) (レス) id: 34cc6412e1 (このIDを非表示/違反報告)
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