ブルースター、センニチコウ、バラ、それからアネモネ。2 byこたつむり ページ33
『本日、大人気歌い手「うらたぬき」が家の中で__』
ニュースからの報道で、頭を打たれたような衝撃だった。
朝ごはんのトーストを床に落としてしまったような音が遠くで聞こえて、うるさく鳴く蝉の声とエアコンの稼働音が近くで聞こえた。
「うら、さん?」
__
「うらたさん? え? センラくんに連絡せな」
今朝のキャスターの落ち着き払った言葉に、焦りや驚きよりも冷静さが先に出た。
報道を聞いても涙一つ出て来ない。
俺はこんなに冷たいやつだったのだろうか。
__
『ニュース聞いた? うらたさんが家で』
「聞いた。ほんま驚いたわ。そんなんするとは思わんかったけど、あっちで仲良うやってるんかな」
驚いたまーしぃの言葉に、僕がしっかりせんでどうする。とバレない程度に深呼吸をする。
そうして落ち着いたように装って少し声の抑揚をつけてまーしぃの言葉を遮る。
うらたんが今までどれだけ寂しさに押し潰されそうになっていたのか、今ではもう知る術はない。
それでも、うらたんが最終的にその選択をして、幸せになってくれたら其れでええわ。
『……せやな、そうよな』
「うん。気の利いたこと、言ってやれんですまへんな」
そう言って、まーしぃからの電話を切った。
切った瞬間、画面はロックされたホーム画面に切り替わり、そこには僕とうらたんのツーショットの背景。
心臓を抉られたように、膝から崩れて床で丸まった。
____
そんなことがあってから数年後、僕とまーしぃとさかたんで、命日の墓参りに来ていた。
お墓に水を流し、去年の花から今年の花へ。
隣に並べられた二つの墓には毎年の様にお揃いの花束が咲いていた。
ブルースターとセンニチコウ、バラ、それからアネモネ。
結婚のブーケとは花が違うのかも知らないけれど、二人にはこれがよく似合う。
________
解説です!
主人公の性別は特に決めてないです。
ブルースター→「幸福な愛」
センニチコウ→「色褪せぬ愛」
バラ →「貴方を愛しています」
アネモネ →「儚い希望、恋の苦しみ、真実」
です。
おそらく主人公はもうこの世におらず、うらたぬきさんが夏の主人公の命日に後を追います。
うらたぬきさんが夏の話ではなく、春の話を書いていたのは恋愛関係のイメージで春だったのでは?
主人公は物書きで、どんな話を書いていたのかは知りませんが、うらたぬきさんはそのことを知っています。
一番最後はうらたぬきさんが後を追って数年後の話です。
シュレディンガーの猫 byこたつむり→←ブルースター、センニチコウ、バラ、それからアネモネ。byこたつむり
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月夜(プロフ) - 依吹さん» 了解です (2021年4月23日 22時) (レス) id: 257f10f00d (このIDを非表示/違反報告)
依吹(プロフ) - いっぱいになりました。 (2021年4月22日 23時) (レス) id: fd3e74f050 (このIDを非表示/違反報告)
依吹(プロフ) - 時林檎。さん» 急にどうしたんですか。筋トレにでもハマりました? (2021年4月22日 23時) (レス) id: fd3e74f050 (このIDを非表示/違反報告)
時林檎。 - 依吹さん» 筋肉は裏切らない (2021年4月22日 17時) (レス) id: dae35fe255 (このIDを非表示/違反報告)
依吹(プロフ) - 時林檎。さん» ほんとですか! ありがとうございます。ほんとごめんなさい (2021年4月19日 22時) (レス) id: fd3e74f050 (このIDを非表示/違反報告)
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