ブルースター、センニチコウ、バラ、それからアネモネ。byこたつむり ページ32
「うらたみたいに歌いたいなぁ」
「何時の話してんだよ」
二人で窓辺に並んでいると、不意にそんな台詞が隣からした。
懐かしいことを突然言い出した。
幼稚園の頃だったか、妙に歌が上手な俺を見て、憧れの俳優でも見たかのように輝かせた目でそういった。
いきなりすぎる昔の言葉に思わず呆れの入り混じった笑いが出る。
「あはは、なんか不意に思い出してなぁ」
「そのパソコンは何だよ」
俺の台詞にこちらを向いたあいつは苦笑いしたような反応をした。
不意に思い出した、って、さっきまでの会話で思い出すような会話でもあったのだろうか? と一瞬考える。
やっぱりそんな要素はどこにも無い。
そこから話を広げられなくなった俺は、あいつの手元にあるパソコンを指差す。
「外の風景を見て、色々書いてるのさ。あの桜の木とか。そこはかとなく、神秘的だと思わないか?」
「言われてみればたしかにな」
真っ直ぐと歩道橋の近くに立っている木を指差して、楽しげに笑った。
妙に夕日が巧く差し込んでいて、神秘的と言われれば神秘的だ。
あいつの台詞で言われたからだろうか、他の誰かから同じことを言われたらまた別の返しをしていただろうか。
あいつの言ったことはすんなりと自分の中に入ってきて、簡単に納得できてしまう。
「なぁ、うらたはさ___」
あいつがなにか言い掛けた所でぶつりといきなり終わった映画のように、画面から文章が消える。
全然違う。
台詞、地の文。
すべてが違う。
やっぱり俺にあいつの代わりは無理なのだろうか。
あいつの文を、本をまた読むことは叶わないのだろうか。
あいつを俺の前から消した常識と、偏見と好奇心の目。
なぁ、戻ってきてくれよ。
俺やっぱ、あいつらと一緒にいても楽しいけど、お前と一緒が一番嬉しいんだよ。
俺がお前の所にいけば、また一緒に居られるかなぁ……?
ブルースター、センニチコウ、バラ、それからアネモネ。2 byこたつむり→←髪/skt 時林檎。
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月夜(プロフ) - 依吹さん» 了解です (2021年4月23日 22時) (レス) id: 257f10f00d (このIDを非表示/違反報告)
依吹(プロフ) - いっぱいになりました。 (2021年4月22日 23時) (レス) id: fd3e74f050 (このIDを非表示/違反報告)
依吹(プロフ) - 時林檎。さん» 急にどうしたんですか。筋トレにでもハマりました? (2021年4月22日 23時) (レス) id: fd3e74f050 (このIDを非表示/違反報告)
時林檎。 - 依吹さん» 筋肉は裏切らない (2021年4月22日 17時) (レス) id: dae35fe255 (このIDを非表示/違反報告)
依吹(プロフ) - 時林檎。さん» ほんとですか! ありがとうございます。ほんとごめんなさい (2021年4月19日 22時) (レス) id: fd3e74f050 (このIDを非表示/違反報告)
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