Inevitably2 ページ3
「そうや、渡すの忘れとったけど。これ」
と、わいわいさんが差し出したのはあの日なくしてしまったと思っていたかんざしだった。そっと両手の上に乗せられたそれは、端が少し欠けてしまっていたけれどちゃんとあの日のまま。
「探して、くれたんですか…？」
「んー、落ちたんは見えとってんけど暗かったからな、あんとき。見つけても話しかけられんかったし」
ごめんな、と申し訳なさそうに言うわいわいさんに首を振る。わいわいさんは悪くなんかない。こうしてきちんと拾ってくれた、かんざしも、わたしの気持ちも。涙ぐみそうになって俯いてしまった。ずっと持っててくれたんだ。
「それ見せたら、あんときのこととか思い出させてまうかなって考えもしてんけど」
「…うん」
「次、祭り行くときそれつけて一緒に行こや。な」
「はい」
「…浴衣めっちゃ可愛かった」
「それ、あのときに言ってほしかった」
「言えるか…」
ぷい、とそっぽを向いてしまったのでわたしはその肩に寄りかかった。あのときはもう、こんな風にまたわいわいさんと一緒にいられるなんて思わなかったから。確かに悲しくて寂しくてしばらく立ち直れなかったけれど、…わたしはわいわいさんの隣を誰かに譲りたくない。
「あー腹減ったなあ。彼女の手料理食べたいなあ」
「棒読みが気になりますけど、仕方ないので作ります」
ソファから立ち上がって「なに食べたいですか？」と振り返る。冷蔵庫には確か卵と…じゃがいもあったかな。買い物に行った方がいいか。ついでにトイレットペーパーも買って、ああ、洗剤も切れてたんだった。
「わいわいさん、わたし買い物に行ってきますね」
カーディガンを羽織って財布を胸に抱くと、わいわいさんも立ち上がる。いつものキャップをかぶると「ん」と手を差し出してくる。わたしは嬉しくなってその手を握った。あったかくて、ちょっとぷにぷにしてる可愛い手。…って言うと怒られるから言わないけれど。
「今度は離さないでくださいね」
「離さんよ。っていうか離れんな」
玄関を出るときにちゅっとキスされて笑ってしまった。意外と可愛いことをする。
ドアを押し開けると快晴が広がっていた。いい天気だ。
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ましろ - 文章もセリフもとても素敵です。幸せになりました。書いてくださってありがとうございます。 (1月10日 2時) (
レス) @page17 id: 42d369048f (このIDを非表示/違反報告)
C(プロフ) - きさん» ありがとうございます、そう言っていただけて幸せです！ (2021年8月6日 17時) (レス) id: 33552a9fa0 (このIDを非表示/違反報告)
き - ほんとに最高です。好きです、ありがとうございます (2021年8月1日 5時) (レス) id: 304424e7c7 (このIDを非表示/違反報告)
C(プロフ) - あさん» 長い間続きをお待たせしてしまいすみません。私生活の方でバタバタしておりまして滞っています。ですが待っていてくださる方がいらっしゃることがわかってとても嬉しく思っています。もう少しお待ちいただけたらと思います。ごめんなさい＞＜ (2021年3月8日 2時) (レス) id: 779f64aa16 (このIDを非表示/違反報告)
あ - どうか、どうか続きをいただけませんか…？ (2021年3月4日 23時) (レス) id: f01f1c5c0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：C | 作成日時：2020年9月4日 23時
