Inevitably5-6 ページ15
スプーンで掬って口に運ぶと、卵粥は思ったよりも熱くはなかった。きっと配慮してくれたのだと思う。優しい塩気のある、美味しいお粥だ。自然と頬が綻ぶ。
「おいしいです」
「おん」
額の匂いを嗅がれていたオセロは数分は大人しくしていたけれど、我慢ならないとでもいうかのようにわいわいさんの胸元を飛び出して行ってしまった。それを満足げに眺めるわいわいさん。
時間をかけて、ゆっくり卵粥を完食した。ごちそうさまでしたというと、わいわいさんはわたしの頭を撫でて食器をキッチンに持って行く。
「他になんかほしいもんある？」
さっと洗い物を終えたわいわいさんがキッチン越しに聞く。予想していなかった問いなので、わたしはすぐに答えることができなかった。
視界の隅に、編集途中のパソコンの画面が見える。
「大丈夫です」
腰回りにまで滑り落ちてしまっていた毛布をまた肩まで被って膝を抱く。邪魔はしないから、せめて、せめてここに座っていることは許してほしい、かも。
キッチンを抜けて、わいわいさんが隣に座る。ベッドに行きなさいって言われるかな、と怖くて顔が上げられない。
「ほんまは？」
ソファの背もたれに頬杖をついて、少しいじわるそうな笑みで言う。見透かされてしまったようで、一瞬だけ体中の体温が上がった気がした。
「ほんまのこと言うてくれたら、叶えたれるのになぁ」
頬杖をついていない方の手が伸びてきて、わたしの前髪をそっと左右に分ける。
甘えるような、誘うような声色にくすぐったくて恥ずかしかった。たまたま体調が悪いから、わいわいさんがズルいから。そう誰にも聞かれていない言い訳をして、わたしはわいわいさんの首元にしがみ付いた。
「素直でよろしい」
耳元に寄せられた唇が、わたしをどろどろに溶かしてしまいそうな声色で言う。全身の力が抜けていく。
わいわいさんの腕の中では、どんなわたしだっていつだって無防備で。
ずっとここにいられたらいいのにと、本当に思う。
「わいわいさん、好きです」
「知っとる」
消えそうな声でも、ちゃんと拾ってくれる。わたしはまた、わいわいさんの言う”むにゃむにゃした顔”で笑っているのかもしれない。
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ましろ - 文章もセリフもとても素敵です。幸せになりました。書いてくださってありがとうございます。 (1月10日 2時) (
レス) @page17 id: 42d369048f (このIDを非表示/違反報告)
C(プロフ) - きさん» ありがとうございます、そう言っていただけて幸せです！ (2021年8月6日 17時) (レス) id: 33552a9fa0 (このIDを非表示/違反報告)
き - ほんとに最高です。好きです、ありがとうございます (2021年8月1日 5時) (レス) id: 304424e7c7 (このIDを非表示/違反報告)
C(プロフ) - あさん» 長い間続きをお待たせしてしまいすみません。私生活の方でバタバタしておりまして滞っています。ですが待っていてくださる方がいらっしゃることがわかってとても嬉しく思っています。もう少しお待ちいただけたらと思います。ごめんなさい＞＜ (2021年3月8日 2時) (レス) id: 779f64aa16 (このIDを非表示/違反報告)
あ - どうか、どうか続きをいただけませんか…？ (2021年3月4日 23時) (レス) id: f01f1c5c0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：C | 作成日時：2020年9月4日 23時
