Episode 13 ページ16
「取引？」
『うん。俺をボーダーに入れて欲しい。でも俺の身元は容易に信用できるものじゃない…というか多分、証明する物がない。信用できない人間を仲間に加えることは難しいだろ？』
「……だから取引として何かを差し出す代わりに自分を仲間に入れて欲しい、と？」
台詞を先読みした唐沢にAは嬉しそうに頷いた。話の早い人間は好きだ。
『俺の保持するあらゆる情報を提供する用意がある。防衛に有効な戦術、戦略。近界諸国家の最新の情報。トリガー技術……他にもできる範囲の事はする。それと引き換えに仲間に加えて欲しい』
Aの申し出に皆黙り込む。情報こそは今ボーダーにおいて最も必要なものだ。兵隊の頭数だけ揃えてもこの街は守れない。それは第2次大規模侵攻で情報があったからこそ被害を抑えられた現在、皆が痛感している。
だが、最初に沈黙を破った林藤は紫煙を燻らせて食えない笑みを浮かべながら否定的な言葉を口にした。
「オレはどっちかって言うと反対だな」
根付や忍田が驚いた表情を浮かべる一方で、Aはだろうなという表情を浮かべただけで何も言わなかった。
「このガキンチョから得られるものが多いとは思えない。コイツのいた世界のボーダーは壊滅させられた。確かに戦闘経験は豊富かもしれないが、こいつの知る戦術、戦略もしょせんはその程度ということだろ？なら別にこっちがリスク負ってまで引き入れるメリットは無い」
｢でもまだ子供でしょう？そこまで高度な事を求めるのは…｣
｢戦争に身を置く兵士に年齢は関係ないよ。まだ子供だから出来ないはただの言い訳だ｣
根付のフォローは遊真によって切り捨てられ、重苦しい空気が漂い出す。その雰囲気を変えるため、というわけでもないだろうが、鬼怒田が別の話題を持ち出した。
「あー、わしが興味があるのはトリガー技術についてなんだが」
『なに？』
「差し出せるのはお前が所持しているトリガーの情報だけか？」
『まぁそうだね、風間さんに渡したポーチに入ってるトリガーの解析の許可とそのトリガーの情報。あとはダブりのあるトリガーはあげられるけどひとつしかないのは返して欲しい。未来のボーダーのトリガーは好きにして』
｢どの程度の技術が使われとるかによるがそれでも情報だけで取引材料に出来るような代物なのか？｣
『俺の持ってるトリガー、近界でも独自の進歩を遂げてきた国のだから解析してボーダーの規格に落とし込んだらかなり進歩すると思うよ？』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 76人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：βカロチン | 作成日時：2019年2月22日 22時
