Episode 12 ページ15
そこまで話して一息つく。周りを見てみるが話を聞き終えた面々は当然と言うべきか、信じている様子はなかった。口を挟まなかった鬼怒田と根付は呆れ顔を隠そうともしていなかったし、唐沢や林藤ですら反応に困っているようだった。
「これは何とも…突飛な話ですね…」
「ふん、くだらん」
できるだけ穏便な言葉を選ぼうとする根付のかたわらで鬼怒田が率直に吐き捨て、城戸がトリガー開発の最高責任者へ視線を向ける。
「くだらないかね」
「ええ、あなたには申し訳ないですがね、城戸司令。黒トリガーを使って時間を遡ることなど不可能です。しょせんトリガーにそこまでのエネルギーは生み出せん」
「しかし、本来は離れた空間同士を直接繋げるゲートを生成する技術があるのはきみも知ってのとおりだ」
そんなことは指摘されるまでもない、と鬼怒田が鼻を鳴らす。
「実際にはゲート生成のメカニズム自体はよく分かっていませんがね。とにかくトリガー文明の中に空間に干渉する技術があるのはわしも認めますし、現に我々も利用しています」
「しかし、空間に干渉するのと時間に干渉するのとでは話が違う、と？」
口を挟んだ風間をも睨みつけ、鬼怒田は忌々しげに言った。
「そもそも現代の科学においても『時間』の定義すら定まってはおらんのだ。その存在、働き方。本当はこの宇宙に時間など存在しないという学説を唱える者すらおる」
『時間遡行とはちょっと違うのかも。�爐錣燭鍬瓩辰討い�人間をデータ化して量子分解。その後異なる位相、異なる時間軸にそのデータを投射して再構成する。って仕組みだと思うんだけどよくわからん』
｢ふん、その説明だとどちらにせよ黒トリガーで出来ることの範囲を越えてることに変わりはないわ｣
『って言ってもなぁ…霊子転移。霊子変換投射。人間の魂をデータ化させて異なる時間軸、異なる位相に送り込み、これを証明する空間航法。
それないと俺、活動体保てないから死ぬんだと言ったAに城戸の鋭い視線が突き刺さる。ここで諦めた素振りを見せても奪いに来るかもな、遊真の時はそうだったしと思い出に浸りながら自分の持ち札を思い描く。
『可能かどうかはひとまず置いとこう。黒トリガーは渡せないけど他の物なら渡せるものがある。取引の時間に入らない？』
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作者名：βカロチン | 作成日時：2019年2月22日 22時
