【HQ】幼 馴 染 。【稲荷崎】

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傍観者でいるはずだった。

俺にとって一ノ瀬Aは一度顔を合わせたきりの赤の他人で。俺が関与しなくても侑と治が何とかしてくれる。俺には全く関係のないことじゃん。



「なッ！？」

「何撮っとんのや！！」

「いやいい光景だな〜と思いましてね？」



チラリと上履きの色を見る。うわぁ3年生じゃん…
まぁそっちの方が都合いいか。



「先輩たち、これ教師に見せたらどうなると思います？」

「はぁ？？」

「アンタたちが就職するか進学するかとか、もう既に合格してるとか、そんなこと俺にはどーでもいいけど」

「なんや1年か！？調子のんなや！！」

「これ、教師に見せてこよっかな〜。ネット上にアップでもいいかも？」



あからさまに焦りだす3人。うんうん。自分の進路大事だよね。





「それ、早く綺麗にして戻せよ」

「…ッ！」





あぁ俺、こんな正義感の強い人間だったっけ。他人の絵を破られて怒るなんてさ。


＿＿いや、実際俺は狡い人間だ。





『……またか』





あの時の一ノ瀬さんの顔を、忘れられない。寂しげで苦しそうで、美しいあの顔を。

きっとあの出来事を双子は知らない。そして、今起こってることも。

俺だけが知っている。



「お？角名やん。こんなとこで何しとん？」



気が付けば絵はぐしゃぐしゃだが元の場所に張り出されていて、上級生もいなかった。



「侑こそ、何してんの？」

「A探しとるんやけど見つからんねん。何か知らん？」



きっと、また呼び出しでも食らってるのではないかと心配しているのだろう。少し焦った様子が伺える。

今のこと、侑には言うべきかな。なんて。



「＿＿いや、知らないかな」




言う気もないのに悩む必要なんてないよね。



言わないのは正義感から？侑たちに余計な心配をかけさせないため？わざわざ心配かけないよう隠してる一ノ瀬さんを庇うため？

ヒーロー気取り。偽善者。言いようは沢山あるけどどれも違う。むしろ偽善者であれば良かったのに。

だって俺のコレはただの、



「ツムと角名やん。こんなとこで何しとん？」

「俺と同じこと言うなやサム」

「なんやと？てかA知らん？」

「同じこと言うな言うてるやん！！」







「＿＿はっ、やっぱお前ら双子だな〜」








__Episode.角名倫太郎「独占欲」

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