【HQ】幼 馴 染 。【稲荷崎】

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男の嫉妬は見苦しいが、女の嫉妬は怖すぎる。
呼び出し、罵声、嫌がらせ、無視やハブり。
全くないなんて思ってないけど、過度なものは漫画や小説の中だけだろ、とも俺は思っていた。


そう、思っていた。
目の前で女子に呼び出される一ノ瀬さんを見る前までは。



人気のない階段近く。恐らく相手は上級生だ。3人がかりで一ノ瀬さんを囲っていた。
これは男の俺でも普通にビビる。



「じゃ、放課後またここな。ちゃんと来ぃよ」



と、ひと睨みして去っていこうとする上級生3人。
これは双子に報告した方がいいかな、と思った矢先だった。



『え、嫌ですけど』



その声は驚く程にはっきりと聞こえた。



「はぁ？嫌ってなんや」

『そのままの意味に決まっとるやないですか』

「拒否権あると思っとんのか？」

『思っとりますよ』



『あ、私先生に呼ばれてるんで。失礼します』と堂々とした態度でその場を去る一ノ瀬さん。
ええ何それカッコいい。



「ッなんやねんアイツ！！」

「ほんま可愛いからって調子のんなや！！」

「…なぁ、あれ」



1人がこちらに向かって来るのが分かり、急いでその場から離れ場所を移動する。盗み見してたのがバレたか？と思ったが、そうではないらしい。

先輩はさっきまで俺がいた場所に立ち、目の前の掲示板を指さした。



「見てみぃ、これ」



つられて俺も視線をやった。

そこには綺麗に描かれた手や水、「手をきれいに洗いましょう」という文字が目立つポスターだった。
そしてその下に小さく書かれている文字には、「一ノ瀬A」とあった。



「(そういえば一ノ瀬さん、美術部だったっけ…)」



絵も描けるとか本当に完璧すぎ、と思った瞬間、その絵が掲示板からビリッと剥がされた。


そして、ぐしゃり。



「…は？」



何を、やっている？

思わず声を出してしまったが、そんなこと今はどうでもよかった。



「こんな絵、誰も見ないしええやろ」

「下手くそやから飾る価値もないわ。ゴミやゴミ」

「ゴミはゴミ箱に捨てなあかんよなぁ」





カシャリ。





「いい写真と〜れた」

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