【HQ】幼 馴 染 。【稲荷崎】

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『侑来んな。これ以上待てへんし出直してくるわ』

「あ、あのさ」



侑の席から立ち上がる一ノ瀬さんを引き止める。聞きたいことがあった。



「さっきの、俺に「嫌じゃないよな？」って一言聞けばすぐ済んだ気がすんねんけど…俺はもちろんYesって答えるし」

『そしたら結ちゃんまで恨まれるやん』

「え、」

『私があの場で結ちゃんに助けを求めるのは簡単やけど、そしたら結ちゃんまであの女に恨まれんで。アイツ結ちゃん利用して侑に近付こうとしてたしな。侑の友達を助けた女って立場作りたかったんやろな』

「そうなん！？」



一ノ瀬さんは周りをよく見ているし、状況を理解する能力がとてつもなく高い。人の顔色を伺うのが得意とか言ってた気がするけど、あの女子の考えてることをほとんど見抜いてるようで少し怖くなる。

でも、周りの見えてる一ノ瀬さんは気配りが出来ることを俺は知っとる。怖い以上に優しいんや。



「ありがとうな」

『なんで結ちゃんがお礼言うん？おかしなやっちゃな〜』

「俺の分まで戦ってくれたんやろ？」

『戦いて。ただの口喧嘩みたいなもんやし、私が負けるわけあらへんやろ』

「おかげで俺はあの女子から恨まれんで済んだんや。まぁ別にあの女子のことはよー知らんから恨まれたところで知ったこっちゃないけどな」

『私の所為で結ちゃんの株が下がるようなことはしたくないってだけで、ただの自己満足や。お礼言われることやない。私が原因やし』



もう戻らな。と去っていく一ノ瀬さんの背中をぼーっと見送る。その途中で、大事なことを言い忘れてたことに気付いて、叫んだ。





「俺、その呼び方気に入っとるからな！！」

『分かっとるよ！また後でな、結ちゃん！』

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