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「薬術はどうにも好きになれない。……あの薬品の匂いがどうにも耐えられなくてな」
「学院内の私闘は禁止だと何度言えば分かるッ。気に入らないところがあるのなら正々堂々と決闘を申し込めと何度も言っているだろうがッ」
「喧嘩を売ったつもりなら買ってやると言ったんだ。まずはその礼儀から直してやろうじゃないか、なあ?」
「…手袋なら拾ったぞ。気乗りはしないが、お前は納得いかんのだろう? なら、その身で直接分からせたほうが早い。ここはそういう寮だからな、単純で実に良い。俺もあれこれ考えるのは得意じゃあないんだ」
「花を持たせること自体が悪いわけじゃない。手を抜くこと、そのために他者を軽んずることは最大の侮辱だと考えろ。……少なくとも、俺は、そう思っている」
「心を折るが早いか、お前の箒を折る方が早いか……」
「立て。我が寮の精神を言ってみろ。──そうだ。不撓不屈と力を重んじるのがこの寮だろう? なら、お前はどうするべきか──もう分かるだろう」
「無鉄砲さは命を縮める。頼むから考えなしに突っ込むのはやめないか……」
「手を抜くことが、お前にとっての情けだとでも? 下手な恩情は相手を余計に苛立たせることくらい分かっているだろうに、何故?」
「こら。もう就寝時間は過ぎているんだ、灯りを消して早く寝なさい。……興奮して目が冴えるのは分かるがな、明日に響く…」
「……だから、その名前で呼ぶなと何度も──いや、もういい。お前の好きにしろ」
「分かった。……分かったから、私を挟んで会話をするのはやめろッ」
「あ……っついッ!」
「舌を火傷しないようにするには、口に入れるものを舌に乗せない方が良い。舌の、裏に……、いや……もういい」
「諦めの悪い輩は嫌いじゃない。考え無しはまた別物だが」
「熊という生き物は……、往々にして、臆病であると言われている。だが──我が子が敵に襲われていたり、己が身の危険を感じた際、恐ろしいほどの攻撃性でもって襲い掛かるという。どういう意味か、もう分かるだろう?」
「立ち上がり、藻掻きあがくことが苦しいのか。向かい風が恐ろしいか。……いや。いいや。お前は、吹雪の荒野に一人佇むことを望んでいるわけではないのだろう? ──万難を乗り越えることに耐え切れないと思うのなら、私のもとへ来ると良い。お前に降りかかる吹雪を振り払うくらいのことはできる」
「君に注ぎこむ光が、万年の氷雪を溶かすものであらんことを」
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