エイトさんのしんどい日。3

2 ページ17

村上side




ありがたいことに、歌番組、出させてもらってますけども。

なんや、大倉がヨコをむっちゃ構っとるというか。
曲始まるギリギリまで喋っとるし。

演奏中も、気が付けばヨコの方を見とって。


…って、あぁ！お前のせいで気が散ったやんけ！！

なんて、ミスを人のせいにして。
子供やなぁ、俺も。


まぁそっからは気合い入れ直して、なんとか演奏しきりましたわ。
ほんでまぁ番組も終わって気が緩んで、なんで集中切れたんかも忘れた頃。


「…なー、信ちゃん」

「ん？あぁ！すまんかった！」


楽屋でみんな帰る準備しとったら、大倉に声をかけられた。
てっきりミスしてもうたことや思って、謝ったんやけど…


「それさっきも聞いたわ、ええって(笑)」


たしかに曲終わってすぐ謝ったな。
大倉にツッコまれるとは、不覚。


「そんなことより…横山くんなんやけどさぁ」

「ヨコ？…あぁ！お前、曲中ずっとヨコ見とったやろ！」

「あれ、そんなあからさまやったぁ？」

「分かるわ！テレビの前の皆さんも気付くくらい分かりやすかったで(笑)ほんで？なんかあったん？」

「んー…勘違いやったらええけど、体調…悪そうやなって」

「え？」


ヨコの方を見てみれば、のろのろ荷物まとめとる。

確かにそう言われたら…顔も青いな。


「ほんまやな」

「うん…せやねんけど、俺に言われるんも嫌かなって…」

「そらまた、なんでやねん」

「だって、横山くん…いつも俺らには頼ってくれへんからさ…プライドもあるやろし」


あぁ、なんやそんなことか。


「それやったら問題ないで。ほんまにしんどい時は…な」

「え？」

「後で分かるから。まぁ、ストレートに体調のこと触れらても素直になれんかもしれんし、確かに俺が声かけたほうがええかな」


こんなこと喋っててもまだ荷物まとめ切ってへんし、やっぱしんどいんやろな。


「うん、お願いします」

「おん。ありがとな、大倉」


俺より少し上にある大倉の頭をぽんと撫でて、なるべく自然にヨコのところに向かった。

3→←ほんまは、ヨコも(横山/村、倉)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す