3 crystal＊ ページ6
貴女side
「……ん」
ここは……どこだろう。ぼんやりと目を覚ました先にあったのは、見覚えのない天井だった。起き上がったと同時に、掛けられていた布団がバサッと音を立てる。
私は真っ白な布団に丁寧に寝かされていた。
布団の肌触りがふわふわで心地いい。なんだか安心する。
きょろきょろと辺りを見渡すと見覚えのない家具がいくつもあった。
ここが何処なのか何か思い当たることがあるかもしれないと、昨晩の記憶を必死に呼び起こす。昨日の夜は確かトンネルに逃げ込んで、それから――。
「えっと……あれ……？ 」
困ったことに、それからの先を全く思い出すことができない。綺麗にそこからの記憶が抜け落ちていた。
黒い影――ファントム達に追われた昨日の雨の夜、身体が疲労で限界を迎えていたからきっと、そのまま倒れるようにトンネルの中で寝てしまったのかもしれない。
そして、いま私は布団の中にいる。……もしかして。
誰かが助けてくれた？
もしそうなら、ここはその方の家なのかもしれない。
「……！！」
大切なその存在を弾かれたように思い出して、自分の首を確認すると、手が首にかけられた紐にあたったのが分かった。
ちゃんとそれは私の首に付いていた。ほっとして強張っていた体の力が抜ける。
「……よかった」
目覚めたことを知らせに行った方がいいのかもしれないけど、こういうところで人見知りが発動してしまう。
「でも、挨拶してお礼も言わないと……」
一人で結論を出したその時、誰かが部屋に入ってきた。
「……！」
突然のことに驚いて身構える――なんてことは出来ず、顔を布団の中に隠すようにうずめた。
「あぁ、目が覚めたか」
優しい声が降ってくる。そっと顔を上げると、そこには龍のマフラーみたいなものを身にまとった男の人が立っていた。
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作者名：すみ恋。 | 作成日時：2015年3月21日 13時
