05.ワガママ娘 ページ5
｢そんな怒んなって｣
｢もーうるさい！だる！！｣
｢仲良いんだか悪いんだか分からないわアンタたち｣
教室内を走り回ってやっと手元に戻りかけた私のチョコは、永瀬の手から滑り落ちて床に見事に散らばった。
｢ああああー！！！！！｣
｢…ほんまごめん｣
｢チョコー！私の、チョコがー！！！｣
広範囲に散らばったチョコを近くにいたクラスメイトたちが拾ってくれるも、それはもう食べることが出来ない。
｢ごめんて…帰り買ったるから｣
｢そういう問題じゃないの！今食べたかったの！｣
ワガママ娘みたいに駄々を捏ねているように周りには見えているかもしれないけど、永瀬が悪いもん。
怒ってますよ、とアピールをするためにフイっと顔を逸らすと｢ほんまごめん｣とちょっとだけ落ち込んだ声色で謝る永瀬。
チラッと見れば申し訳なさそうに上目遣いでこちらを見ていた。まるで飼い主に叱られている仔犬のよう。
｢…帰り絶っっっっ対！何が何でも買ってよね！｣
｢それで許してくれるん？｣
｢…ついでにアイスも！！！｣
｢やっぱデブ｣
一言余計な永瀬をギロリと睨めばそれ以上何も言わなくなった。
｢もーアンタたちだけ騒がしいのよ｣
｢ごめん…｣
｢センパイに見られたら一気に引かれちゃうよ｣
｢確かに…いつでも見られていいようにしなきゃ｣
話が逸れたけど、あの日以来センパイには会えていない。
広い校舎な訳では無いのに、何故か会えない。
下心丸出しで、3年生の下駄箱や3年生のフロアを通る時はゆっくり時間稼ぎをしながら通ってはいるものの、姿すら見れない。
｢センパイって？｣
｢あーー永瀬には言わないでいいよ！メンドクサイから！｣
｢は？気になるやん教えてミナミちゃん｣
アワアワとする私の口を永瀬が抑える。味方だと思っていたミナミはアッサリと私を裏切り、
私の頭を侵食しているセンパイについて話し出した。
*
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作者名：みう
| 作成日時：2021年9月9日 11時
