01.シャープペンシル ページ1
世の中にはルールがある。大小は様々だけど、確実に。
ルールを破れば、それなりの罰を与えられる。重い罪には重い罰を、そういう風に決まっているから。
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「は?」
「だーかーら、美術部!」
「いや聞こえてるわ!…マジでゆーてんの?」
「うん、マジだよ」
「頭おかしくなったん?だって美術部って…、」
そう、私が入部を決めた美術部は、ものすごく人気がない。部員の数も少なければ、それと比例するように活動日も少ない。
本当は部活なんてやりたくないけど内申の為に入る人がほとんど。もちろん私もそう。
「いーの!!永瀬には関係ないでしょ!!!」
私の机に肘を置いてだらーんと垂れている永瀬に向って、シッシッと払い除ける動作をすれば、不貞腐れた顔で立ち上がる。
鼻を掠める春の匂い。ピンと伸びた制服。見慣れない教室とクラスメイト。
「なぁ、俺も美術部とか嫌なんやけど」
「うん違う部活にすればいいじゃん、てか一緒にするつもりだったの?」
「なんでや…早く帰りたいんやったら帰宅部でいいやん!俺も帰宅部にするし!それか俺と一緒にサッカー部入ろ!な?」
「なんで2択とも一緒なの?!」
永瀬の説得も虚しく、ガラガラと音がする方に目線を向ければ、「早く座れー」と促す担任。今日も相変わらずやる気がなさそう。
思い描いていた高校生活とは少し違うけど、私は満足していた。
入りたい高校に入れたし、友達だって数人はできた。
部活なんてそもそもやる気がない、最初の顔合わせだけ出て後は知らない。即帰ってバイトする。
私のこれからの高校生活の予定は、ザックリこんな感じ。
「今日帰りちょっと付き合って」
「いいけど…どこ行くの?」
「新作のゲーム出たから、買いに行きたい」
「ひとりでいいじゃん」
聞こえないように隣の席の永瀬と話していると、担任の二宮先生がちらっとこちらを見てシーっと人差し指を唇に当てた。
「〜〜っ永瀬!!!」
みんなの視線が一気に集まって、顔に熱が集まる。
いいの、こういう平凡な毎日で。特に面白みもない、ごく普通の毎日でも幸せだと思う。
高校入学を機会に新調したシャーペンを3回ノックする。
配られた入部届には迷わず、美術部と記入した。
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作者名:みう | 作成日時:2021年9月9日 11時