【仮住】明日もここで (ページ3)

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朝、スマホのアラームが部屋に響いた。寝ぼけて回らない頭を、気合いで動かしながら支度をする。正直、朝は苦手だ。もっと沢山寝たい。が、そんなことをすれば遅刻するのは目に見えている。受け入れたくない現実と共に、私は嫌々家を出て行った。
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やっと帰れる！嫌な時間も集中すれば、すぐに流れていくものだ。いつもよりほんの少し早く終わったこともあり、私はルンルンな気持ちで帰路に着いた。
電車の中でこの後のことを考える。晩御飯には、ゆったりとした和食が食べたい気分だ。そういえば、ボティーソープの残りが少なかったな。今日は早く終わったし買いに行こう。あ、彼に水筒を返さなければ。でも1週間に1度、予定を立てるでもなく、何となく公園で会うだけの関係だ。そんな彼が、今日も居ると思うのは少々自己中心的だろうか。返すのは1週間後でいいものかと悩んでいると、丁度降りる駅へと着いていた。
結局、考えても出ないものは考え続けても無駄。という結論になり、ボティーソープを買いに薬局へと向かった。
いつものボティーソープを買って店を出ると、見慣れた白髪が居た。
「草薙さん…！」
考えるよりも先に言葉が出る。その瞬間、頭を駆け巡る不安。違ったらどうしよう。冷や汗が背を伝う。
「…A…さん？」
恐る恐るといったように、彼がこちらを振り向く。彼の首に掛けられたホイッスルがカチャリと鳴った。あぁ、人違いではなかったようだ。
「どうかしましたか…？」
「いえ、こうして街で見かけるのは初めてだったので…つい声をかけてしまいました…。」
言葉にすると少し気恥しい。彼も少し照れているのか、顔がほんのり赤い。
「そ、そうでしたか…」
目を逸らす彼を見て、水筒のことを思い出す。
「あ！そういえば草薙さん、昨日水筒を忘れてましたよ。一応持ち帰って洗いはしたんですが…。」
「え！あ、あぁ、ありがとうございます…。私が不甲斐ないばかりに…申し訳ない…。」
昨日のことをまだ少し引きずっているのか、今日の彼は些か弱々しく見える。
「水筒は今家にあるのですが…草薙さん、お時間ありますか？」
彼が少しの間固まる。指のひとつも動かない彼は、彫刻になってしまったようだ。