私の男【鴉/零】

6 ページ8

ずんずんと前を進む多摩雄の背中を睨みながら、
引きずられる様に後を追う。

「おいっ多摩雄。どうしたんだよ。」


ガラの悪そうな声が前方から聞こえ、肩越しに顔を覗かせる。

誰だそのいい女！なんて褒め言葉を幾つか聞いて素直に喜んだ。


「いい女だって。」

多摩雄に声をかけると、うるせえと悪態をつかれる。


校舎に入り、教室の窓から数多の好奇の目を向けられるが、ことごとく無視し、屋上へ向かった。

ボロボロのソファーに押される様に座り、目の前の呆れ顔を見上げる。


ここに来たことを咎める彼に、携帯を買えと反論すると、何も言い返せなくなったのか、隣に勢いよく腰掛けた。

タバコに火をつけ、煙を吐き出す多摩雄の肩に顎を乗せ、会いたかったよと耳元で囁けば、多摩雄は満更でもない様で、口元を緩ませ腰に腕をまわしてくる。


ガタンと重たい鉄の扉の開閉音の後、数人分の足跡が聞こえる。

「おいっ多摩雄。紹介しろよ。」


下品な笑顔が3つ、私たちを見下ろす。

「A」


適当な紹介に、隣の男を睨む。

適当な割に、手ェ出したらぶっ殺す。と3人にしっかり釘をさす多摩雄に心の中で喜んだ。

7→←5

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す