雨のち笑顔６ ページ31
「？」
「どうしたのですか？ 急に。」
突然手をぎゅっと握ってきたので、
昴は不思議に思い、りおに尋ねた。
「昴さん優しすぎ。」
「惚れ直しましたか？」
ニッコリ微笑んでりおの顔を見た。
「そういうところ、むかつくけど。」
「そういうところも大好きって言えば
良いのに。素直じゃないですね。」
やっといつものりおに戻った事が、昴は嬉しかった。
「帰ったら飛び切り苦〜いコーヒー淹れて
あげるわ。」
「ほ〜。それは楽しみですね。りおの愛情の
分だけ苦いのでしょうから。」
「・・・。アメリカンで良い？」
「あなたが淹れてくれるなら何でも。」
どう返しても、昴には勝てる気がしないと
りおは思った。
『私の為に雨の中遠回りして、私の淹れた
どんなコーヒーも楽しみだと言ってくれる。
本当にどこまでも優しいんだから…。』
一歩昴に近づき、胸元にトンとおでこを
付けた。
『もうあの頃には戻れない。
ただひたすら前に進むだけ。
一人の時は前を向くことすら出来なかった
けれど。
今の私には秀一さんがいるわ。
誰よりも何よりも彼を愛してる。
それで…良いのよね？ 先輩。』
しっかりとつないだ手のぬくもりを感じ
ながら、りおはそっと顔を上げた。
先ほどまでの悲しい顔はそこにはない。
「りお、良い笑顔ですね。」
「あなたが…そばにいてくれるから…」
りおはそう呟くと視線を移す。
公園のベンチのそばで、景光が
『それで良いんだよ』と微笑んでいるような
気がした。
＝＝＝＝＝＝＝
警察学校での景光との関係を書きたくて。
雨シリーズもご無沙汰だったので、
今回は景光に登場してもらいました。
この二人の事を書くのは嫌いじゃないの
ですが、その先が『死別』なので、
ちょっと切ないですね。
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作者名：aki | 作成日時：2020年1月22日 13時
