雨のち笑顔4 ページ29
「あ、ちょうどよかった。
ココ分からないんです。教えてもらっても
良いですか?」
「え? どこ?」
俺に答えられるかな…そんなことを言いながら
りおの隣に座る。
二人で仲良く話している後姿を、風呂上りに
通りかかった降谷が見つめていた。
それをきっかけに景光とりおは、時々自習室で
一緒に勉強をするようになった。
お互いに習ったことを問題にして出し合ったり、
疑問に思ったことをとことん追求したりしていた。
「広瀬はどんな警察官になりたいんだ?」
ある時、景光が突然質問してきた。
「え? どんなって…そんなこと考えた事も
なかった…。」
「え? そうなの?」
景光は心底驚いた顔をした。
「先輩はどんな警察官になりたいんですか?」
「俺? 俺は……そうだな…ちゃんと人を守れる
警察官かな。」
「守る?」
「ああ。人間って一人じゃ生きられないだろう?
俺たちだって、たくさんの人に守られてきたから
大きくなれたんだよ。
でもさ、恩返しってなかなか出来ないじゃん。
照れくさいし、何より恩返し出来るくらい成長
した時には、相手はもう亡くなってたり…。
だから誰かに守ってもらった分、今度は自分の
周りにいる人を守るんだ。そしたらそいつが、
またその周りのヤツを守って…。」
「どんどん連鎖しますね。」
「ああ。それってすごくないか? みんなが
周りの誰かを守ろうとする。それが出来たら…
メチャクチャ平和な世の中になりそうだろ?」
景光がニカッと満面の笑みを向けた。
そんな無邪気は笑顔を見て、りおは思わず
笑ってしまった。
「え? 俺っておかしい?」
「ぷっ! ふふふ。ご、ごめんなさい。笑って。
でもステキだと思う。私も…そんな警察官に
なりたいな。」
りおの嬉しそうな顔を見て、景光は思わず
赤くなった。
「お、お前ならなれるよ。」
「え?」
「腕っぷしも強いし、お前と鉢合わせした
犯人はバッタバッタと張り倒されて、
あっという間に人質も解放だな。」
照れているのをごまかすように軽口をたたく。
「人をゴリラみたいに言わないでくださいよ!」
「ゴリラは降谷だけで充分だよなぁ」
「そんなこと言って! また降谷先輩に怒られ
ちゃいますよ〜。」
声を上げて笑うりおを見ながら、
『お前なら、その笑顔だけで人を幸せに出来るよ。』
そう思ったことを景光は黙っていた。
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作者名:aki | 作成日時:2020年1月22日 13時