決戦2 ページ7
声が出るようになった3日後———
藤枝と昴そしてりおは、とある埠頭の倉庫にいた。
今回、りおは暴行されたと見えるようなメイクをしている。
「私に手錠をかけて」
さくらが藤枝に声をかけた。
「私の声が出ないと向こうは知っているから、手話で話をするわ。
そうすれば両手を拘束していなくても怪しまれない」
「分かった」
藤枝は返事をするとさくらの左手を取った。
「ううん、右手で良いわ」
「え? お前右利きだろう? 利き腕を拘束したら…」
「その方が相手も油断するから」
「大丈夫なのか?」
藤枝は心配そうにさくらの右腕に手錠をかけ、手錠の反対側は倉庫の手すりにかける。
その様子を昴はじっと見ていた。
「私はさくらの後方にある、コンテナの上で待機しています」
昴が声をかけた。
「はい。お願いします」
準備は淡々と進んでいく。
藤枝はそわそわと落ち着かない気持ちをなんとかしようと懸命だった。
それに比べて、これから命懸けの大立ち回りがあるというのに至って冷静な二人。
(この二人、ホント只者じゃねぇな…)
ホテルにいる時と何ら変わらない二人の態度を見て、藤枝は小さく息を吐く。
オドゥムの幹部、キムウジンと対峙する時刻が刻々と迫っていた。
約束の時刻———
キムウジンは6人の部下を連れ、埠頭に現れた。
指定された倉庫の中に入ると、薄暗い照明の下でぐったりとして、手錠に繋がれたラスティーが目に入る。
よく見ると、その隣には藤枝が立っていた。
「時間通りだな」
藤枝がウジンに声をかけた。
「ええ、約束は守りますよ。あなたの恋人もちゃんと日本に連れてきたでしょう」
そういってコインロッカーの鍵を目の前にチラつかせる。
ウジンはそれをジャケットの左ポケットへとすべり込ませた。
「これを渡すのは情報を頂いて、ラスティーの死体を確認してから。
あなたからのメールによれば、ラスティーを私の目の前で殺してくれるそうですね」
「ああ。疑われるのは嫌なんでね」
藤枝はニヤリと笑った。
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作者名:aki | 作成日時:2020年1月3日 13時