急襲2 ページ48
「崖の下で死んでいるのは俺の仲間さ。
ヤツはケガをしたラスティーが湯治場にいるのではと考えていたようだが…
まさかアタリだったとはな」
ギリギリとさくらを締め上げながら、男は尚も続ける。
「もっとも、ヤツはラスティーにはたどり着けず、期限切れで俺が粛清した。
まさかここでヤツが探していたラスティーを俺が見つけるとはね」
気味の悪い含み笑いをして、男は昴を睨みつける。
「崖の下の男は…やはり病院からつけてきた帽子の男か」
「ああそうさ。新幹線でラスティーにまかれたバカなヤツだ。
ラスティーは藤枝に拘束された。そしてウジン様を殺した。
つまりこの女が都内に戻っている事も知らずに…ずっとこの辺りを調べていたんだよ。
俺は夕べ遅くにヤツを消すために来たんだが…。
ヤツも相当の訓練を受けていてね。とどめを刺せなかった。
明るくなってから出血で動けなくなっていたヤツを探し出し、崖下に突き落としたのさ」
右腕でさくらの首を締めあげながら、平然と殺しの状況を説明している。
おしゃべりをしてはいるが、男にスキは無い。
さくらを救出しようにも昴は動くことすら出来なかった。
(くそっ! このままではさくらがッ!)
昴は眉間にしわを寄せ、奥歯を噛みしめた。
「ぐっ…ふ…ぅ…」
苦しさですでにさくらは朦朧としていた。
それでもわずかな意識の中で、太い男の腕に爪を立て何とか逃れようともがく。
やがて、男の腕を掴んでいたさくらの右手の動きが緩やかになり、そのままだらりと脱力した。
ガクリと全身の力が抜けた。
「ふははは。どうやらラスティーが息絶えたようだ」
「ッ!!!」
昴の目がカッと開いた。
まるで心臓を鷲摑みされたような胸の痛みと、全身の血が沸騰したかと思うほどの《怒り》が昴を襲う。
温厚な男の顔が、みるみるうちに殺人鬼を思わせる様な鋭い目に変わっていく。
握った両手の拳はブルブルと震えていた。
男は昴から殺気を向けられると、腹の底から恐怖を感じる。
「な、なんだ?! こいつはッ!!」
ただならぬ昴の様子に、男が一瞬怯んだ。
一歩、二歩…後ずさる。
昴は逃がすものかと一歩、二歩と男の元へと近づいた。
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作者名:aki | 作成日時:2020年1月3日 13時