心は丸く磨かれて5 ページ5
その時、昴は足元に何か光るものを見つけた。
そっとそれを拾い上げる。
「シーグラスだ」
思わずつぶやいた。
かつては蒼く透明だったガラス。
割れた時は皮膚をも切り裂く鋭利な破片…
それが長く波打ち際で砂と波に洗われて、今はミルキーブルーの丸みを帯びた、海のかけらのようだ。
「壊れてしまったものや失ったものは元には戻らない。
だが…時間の流れや大切な仲間と過ごすうちに、このシーグラスのように丸みを帯びて、違う輝きを得られたら良いんだがな…」
そう言いながら、昴は拾いあげたシーグラスをりおに差し出した。
昴の言葉にりおはうなずく。
私の心も、いつかこのシーグラスのように丸く磨かれて違う輝きを放てるのだろうか…
そう思いながら、受け取ったシーグラスを陽の光に透かしてみる。
キラキラと優しく光るそれを見て「キレイ…」とつぶやいた。
「ッ!」
昴が目を見開く。
「お前…今…声…」
「え?」
「あ!」
「声が…出るよ…昴さん…」
りおの目には再び涙が溢れる。
「ああ、やっとりおの声が聞けたな!」
昴の目の縁も赤くなっていた。
昴はりおを自分の胸元に抱き寄せる。
りおは片方の耳で昴の鼓動を、もう片方で波と風の音を聴いていた。
『お前の幸せを願っているんだ』
かつて夢の中で景光に言われた言葉を、風がささやいた気がした。
りおの手にはシーグラスがしっかりと握られていた。
*****
ホテルに戻る車の中…昴のスマホが鳴る。
りおは助手席で眠っていた。
昴はインカムを装着し、着信にタップした。
赤信号で車が停車すると、昴はそっと眠っているりおの頬に触れてつぶやいた。
「行方不明だったFBI捜査官2名が、無事に保護されたよ」
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作者名:aki | 作成日時:2020年1月3日 13時