アンバーの過去2 ページ33
りおは囲炉裏の周りをザッと掃除をして、部屋の隅にあった座布団を置いた。
その間に昴は薪を外から運び入れ、囲炉裏に火を入れる。
電気は来ているようだったが、あいにく電球が切れているらしく、照明が点かない。
それが当たり前になっていたのか、小屋にはランタンが置いてあった。
「ランタン点きますよ。良かった。照明がないよりましですね」
昴の言葉にりおもほっとした表情を見せた。
小屋の中の空気を入れ替えようと窓を開ける。
しばらくすると木の葉に雨の当たる音が聞こえてきた。
「降って来たようですね」
「うん。窓閉めるね。ちょっと寒い」
窓を閉めると、りおは左足を引きずりながら、囲炉裏のそばへと戻った。
昴は火の様子を見ながら、時折薪をくべる。
「なんか、大変だったけど…でもこういうのも良いね。
火ってコントロール出来ない時は怖いけど、こうやって囲むと不思議と癒される…」
昴の隣でりおがつぶやいた。
「そうですね。あなたとこうやって火を囲むのも悪くない」
「あ、ねえ、もう秀一さんに戻ってよ。救助は明日向かうって連絡あったんだし」
りおの言葉に昴は頷くとメガネとウィッグを外した。
最後にチョーカーの電源をOFFにすると、スルリと首から外した。
「これで元通り」
「ふふ。おかえりなさい。秀一さん」
「ただいま、りお。今日はいろいろあって1日長かったなぁ。
海鮮丼食べたのがずいぶん前な気がするよ」
「そうね。そういえばお腹すいた? 何か食べる?」
「そうだな…。チョコレート。チョコレートが食べたい」
赤井のリクエストを聞いて、りおはゴソゴソとリックの中をまさぐる。
「はい、どうぞ」
「食べさせてくれないのか?」
「え?」
「前に少年探偵団が遊びに来た時みたいに」
子どもたちに隠し撮りされた時の事を言っているらしい。
「それ、激写されて後日大慌てだったの誰だっけ?」
「りおじゃなかったか?」
「違うよ。秀一さんでしょ。
哀ちゃんに『これだけ好きをダダ洩れにして、仲の良い同居人とは良く言ったものね、嘘つき!』って言われて言い返せなくなっていたじゃない」
「それは昴だな」
「もう!! 都合悪くなるとすぐ昴さんのせいにするんだから」
そう言いながら、りおはチョコレートの包みを開けて一粒取り出した。
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作者名:aki | 作成日時:2020年1月3日 13時