運命の歯車3 ページ16
コール3回ほどで「もしもし?」と聴き慣れた声が聞こえた。
「ラスティーです」
静かに伝えると、あなた声が! と驚いた様子だった。
「心配かけてごめんなさい」
「作戦は成功したようね。ただ、FBIに身柄を渡すことはできなかったようだけど…。
相手が爆死したと聞いた時は、正直焦ったのよ」
ベルモットの声が優しく響く。
「ええ。確かに現場は凄惨な状態だったらしいわ。
けど、藤枝が私から現場を見えないようにしてくれたの。
スキを突いて二人で現場を離れたから、私は何も見ていないわ…」
これは本当だ。
爆発の瞬間、昴に抱き抱えられるようにコンテナの影に隠れた。
その後はジョディと少し話した後、『絶対に向こうを見るな』と昴と藤枝に念を押されて、3人で現場を後にした。
現場処理は主に日本警察が行った。
「そう。それなら良かった」
ベルモットは状況を知って安堵したようだ。
「結局藤枝はアメリカへ行ったそうね」
「ええ。恋人のお墓を作りにね。FBIには逮捕されちゃったけど…」
それは藤枝が望んだことだった。
「ジンは怒ってる? 藤枝を勝手に連れ出して、逮捕までされちゃったし」
「大丈夫よ。ジンには『藤枝が使える男かどうかラスティーが試すらしい』と伝えてあったから。
それよりも、オドゥムがこちらに牙を剥いて来そうなことは、ジンも感じていたわ。
遅かれ早かれ、あの組織とはやり合う事になると分かっていたみたい」
ベルモットはため息をついた。
「近いうちにアジトに来て。ジンも話があると言っていたわ」
「分かったわ」
いくつか業務的な連絡をして、電話を切った。
黒の組織とオドゥムの争いが目の前に迫っているという事実に、足元がゾワリとした。
どちらも大きな組織だ。衝突し合えば、民間人だって巻き込まれる可能性は大きい。
自分がふたつの組織の関係を悪化させたのか…
そう思うと心が痛む。
「話は終わりましたか?」
後ろから昴の声がした。
「え?ええ。終わりました。近いうちにベルモットやジンに会いに行きます」
「そうですか。ジンは今回のことを怪しんでいませんでしたか?」
「大丈夫です。ベルモットが上手く伝えておいてくれたお陰で」
「それは良かった」
組織内での立場に変化はないと知って、昴は安心したようだった。
「…昴さん」
「ん? どうしました?」
「私…とんでもない事をしたかもしれない」
りおの顔は蒼白になっていた。
123人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:aki | 作成日時:2020年1月3日 13時