旅の再スタート3 ページ42
通された広い和室。
窓から見える景色は、山肌を流れる滝と広葉樹、そして先には遠く海が見えた。
「ここはこの旅館の中で、一番美しい景色が見えるお部屋でございます。
紅葉にはまだ早いですが、それでも木々の緑と、海の青、滝の白。
見ていて飽きません。時々野生動物たちも姿を見せることもありますよ。
あと、こちらのお部屋にはお風呂もございます。
大湯と同じ天然の温泉から引いてきております。
お風呂からも景色が見えますから、そちらもお楽しみください」
担当の女性が微笑みながら説明をしてくれた。
「ところでお二人は新婚旅行でいらっしゃったのですか?」
「え? 新婚りょ…」
「ええそうです。結婚したらぜひ来てみてと友人に紹介されて」
昴はりおの言葉を遮るように答えた。
『オドゥムから身を隠しているのですから、あまり正直すぎない方が良いですよ!』
『そりゃそうかもしれないけど、でも《新婚旅行》だなんて!』
『新婚旅行とでもしておけば、《男とお泊り》《不倫か?!》《恋人か?!》って変に勘繰られなくて済むでしょう?
人は根も葉もないうわさ話が大好きですから。それともりおは勘繰られたいのですか?』
『ぐっ…』
「ご友人のご紹介でございましたか。ありがとうございます。
お二人とも仲がよろしいのですね」
コソコソと話す二人を見て、女性はクスクスと笑っていた。
「お夕飯の時刻は6時30分でございます。それまでごゆっくり、お過ごしくださいませ」
一通り部屋の説明が終わると、そう言って女性は出て行った。
「ふう〜。昴さんが変なこと言うから緊張しちゃったわ」
座布団に腰を下ろしてりおはぐったりしていた。
「まあまあ。これで他のお客や従業員さんに、変に勘繰られることも無いでしょう。のんびりできますよ」
隣で昴はクスクス笑っていた。
123人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:aki | 作成日時:2020年1月3日 13時