ピンチ3 ページ13
「あなたのおかげで、閃光弾に目をやられずに済みました。ありがとうございます」
昴は礼を言うと、藤枝に何かを差し出した。
「なんだ?」
「さっき、ウジンが逃げる時にポケットから落とした物です。
おそらく空港のコインロッカーの鍵ですよ」
藤枝の手にそっと鍵を置いた。藤枝はグッとその鍵を握り締める。
「ありがとう…」
それ以上は言葉にならなかった。
藤枝の目から涙がこぼれていた。
3人のやり取りを、安室は倉庫の屋根の上から見ていた。
インカムで風見に連絡を取る。
「最近のスマホは便利だな。簡単な言葉ならすぐに調べられる」
通信を切った後、安室はつぶやいた。
「赤井…これで貸し2つですよ」
*****
プルルルル……プルルルル……
チュ・ソジュンの側近が電話に出る。
「ソジュン様。お電話です」
「まわせ」
「はっ!」
「私だ…。何…ウジンが…。マスターレポートはギムレットによって削除…
それは間違いないのか? …分かった」
自身の斥候からだった。
「ソジュン様…次はいかがなさいますか?」
側近が静かに訊ねた。
「いや、しばらくラスティーとあの組織からは手を引く。
エンジェルダストのマスターレポートが存在しないとなれば、計画を大幅に変えねばならん。
アメリカを黙らせ、世界を手に入れるために。
今はせいぜい恋人と仲良くやっているが良い。あの組織もろとも、いずれ闇に葬ってやる」
ソジュンはギリッと奥歯を噛み締めた。
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作者名:aki | 作成日時:2020年1月3日 13時