心は丸く磨かれて1 ページ1
送信完了のPC画面を見て、昴もふぅと小さなため息を漏らした。
やはり自分の仲間の安否は、気になっていたのだろう。
「お前さんたち、似た者同士だな。いや、一緒にいると似てくるのかな」
二人を見ていた藤枝がニヤリと笑う。
『似てる?』
二人で顔を見合わせた。
「ははははは! そういうところだよ。
顔を見合わせるタイミングも、安堵で緩む顔も緊張でこわばる顔も。
お互いの心が近い時シンクロするんだ。
そういう時が一番…幸せな時だよ」
最後の言葉は寂しげに響いた。
「弁当ごちそうさん。うまかったよ。ここ最近栄養ゼリーや菓子パンみたいなモンしか口にしていなかったから、ありがたかった」
どう致しましてと言えない代わりに、さくらは笑顔で応えた。
『次はこの幹部と会う段取りをしないと』
さくらは筆談で藤枝に伝えた。
「ああ、だがその前に」
『?』
「お前、失声症だといったな。原因は何だ? エミリーの事か?」
突然の質問にさくらは驚き、どう答えるか分からないまま下を向いた。
それを見て昴が代わりに答える。
「彼女の失声症の原因は複雑に色々な事が絡み合っていますので…」
だが藤枝はそんなことは意に介さず質問を続ける。
「エミリーの前には直近に何を見聞きした?」
『刺客の遺体』
「腹の傷を負った時か?」
さくらはうなずいた。
「刺客の遺体、エミリーの死、それが直接的な原因と言って良いか?」
下を向くさくらを見て、「もう一つ…」
昴が口を開く。
「もう一つ?」
「先日私は彼女の目の前で、強盗に肩を切りつけられました」
さくらの体がピクリと動いた。
藤枝はそれを見逃さなかった。
「なるほど。好きな男が目の前で切り殺されそうになったって事か」
合点がいった、というように藤枝が何度かうなずいた。
「それで。お前はその時の感情をどうした?」
『え?』
「この男にすがって泣いたか?
生きてて良かったとか、なんで切りつけられてるんだとか、お前の心の中から湧き出る感情をぶつけたか?」
さくらは首を横に振った。
『ただ吐き気がひどくて…昴さんが治療中はトイレでずっと吐いていた』
「そうか…。治療が終わった後は?」
「泣いて…自分で自分を責めるように謝罪を繰り返すだけでした」
昴がその時の事を思い出すように語った。
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作者名:aki | 作成日時:2020年1月3日 13時