動き出したオドゥム2 ページ46
赤井が氷のうに氷を入れてりおの部屋に戻ると、すでにりおは眠っていた。
腫れている左頬にそっと氷のうを当てる。
一瞬表情が変わったがすぐにまたスースーと穏やかな寝息が聞こえた。
エミリーの死も、遺骨のことも、りおはちゃんと心の中で昇華出来ているのだろうか?
声が出ないために、また感情をしまい込んで心の奥底で苦しんでいるんじゃないのか?
一向に声が戻らないのはそのせいでは?
大胆な作戦からは想像もできないくらい繊細な心をもっているのに。
いつまで経っても自分のことは後回しだな…。
りおの事に思いを巡らしながら、赤井は頬を冷やし続けていた。
朝、りおが目覚めると、ちゃんと布団がかかった状態で、頬には湿布が貼ってあった。
体のあちこちが痛んだが、動けないほどではない。
腹部の痛みも昨日に比べればだいぶ引いてきた気がした。
そっと起き上がってリビングに向かう。
赤井は自室でまだ寝ているようだ。
昨日は遅くまで看病してくれたのだろう。無理もない。
朝食でも作ろうと思いたち、エプロンをして髪を束ねた。
30分ほどで食事の用意が出来上がった。
コーヒーメーカーをセットして自室に戻り着替えをして赤井の部屋をノックした。
だが、返事はない。
ドアを開けると赤井はまだ眠っていた。
疲れていたのか、入浴後上半身は裸のまま寝てしまったらしい。
りおはそっと赤井に近づいた。右肩の傷跡にドキッとした。
『そうだ…。花を買いに行ったとき私を庇って…』
まだ赤く痛々しい傷跡に触れようと手を伸ばす。
「ッ!」
その手をグッと掴まれた。
そのまま引っ張られ、体勢を崩して倒れこんだところを赤井に抱きしめられた。
「寝込みを襲いに来たのかな」
赤井はそういってクスクスと笑う。
りおは赤井を見上げて『そうよ』と口を動かす。
そのまま彼の首筋にキスをした。
「そんなかわいい刺客なら、是非毎日お願いしたいものだ」
お返しとばかりに頬にキスをされた。りおはくすぐったそうに首をすくめる。
体を起こし、『そろそろ起きてね』と手話で伝えた。
「もう少しこうしてても良いのに…」
赤井はちょっと不服そうだ。
『早く行かないと藤枝がお腹空かせてる』
「俺といるのに他の男の心配か?」
さらにヘソを曲げてしまった。
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作者名:aki | 作成日時:2019年11月18日 13時