アンバーの作戦2 ページ42
「最初にオドゥムに送る動画を撮らなければいけませんね。」
昴は腕を組み、考えていた。
さくらが藤枝に暴力を振るわれる動画を撮ると言っていたが…。
『このホテルで撮ろうと思って』
「そのためにホテルに?」
『ええ、もちろん。あと藤枝の潜伏用にでもあるけど。
スマホで撮って送っちゃえば良いかなって。ヘンに機材揃っているのも不自然でしょう?』
あっけらかんとしているさくらを見て、昴はため息をつく。
「まあ、そうですが…。血糊とかメイク道具とか、準備が必要でしょう?」
昴は道具を手配しようとスマホを手にした。
『いらないわ。そんなの』
さくらが制止する。
『ホントに殴れば良いじゃない』
さくらの言葉を聞いて、ふたりは驚きのあまり動きを止める。
「ちょ、お前、何言ってるんだ? 俺に本当にお前を殴れっていうのか?
そりゃ、先日は殴ってたけど…」
藤枝の語尾はゴニョゴニョと小さくなった。
『ええそうよ。リアリティーが無ければすぐウソだとバレるわ。
あなたが本気でエミリーの遺骨を奪い返そうと、たった一人で死に物狂いで挑んでる。
そんなリアリティーが欲しいの』
「そうは言ってもなぁ…」
藤枝はしどろもどろだ。
『あなたが一人だと信じれば信じるほど相手は油断する。
私とグルだと知られてはいけないのよ…。
あなたがどれだけ本気か相手に知らしめなければならない。
動画一つ手を抜くことは出来ないわ。』
話を聞いていた昴はため息をつく。
「さくらは言い出したらききません。確かに彼女の言ってることは一理あります。
ここは彼女の提案に乗りましょう」
昴の言葉に今度は藤枝は驚く。
「お前、自分の彼女がボコボコにされるんだぞ。良いのか?」
「良いわけ無いだろうっ!」
「「ッ!」」
昴は思わず怒鳴ってしまった。その様子に藤枝もさくらも息を飲む。
「それを彼女が望んでいるんだ。さくらは格闘技にも精通している。
ボコボコといってもちゃんと急所を避けるだろうから…。私は彼女を信じるしかない」
昴の苦しげな表情に、藤枝は唇を噛む。
さくらは昴を直視できなかった。
動画を撮るに当たり、藤枝は昴にも蹴りの角度やパンチの入れ方をレクチャーしてもらう。
とにかく左下腹部にあるケガには、攻撃を入れないように注意された。
一通り流れを打ち合わせ、藤枝はレクチャーされたことを反復するように蹴りやパンチの練習していた。
その間に昴はさくらに声をかけた。
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作者名:aki | 作成日時:2019年11月18日 13時