アンバーの作戦1 ページ41
約30分後———
昴は東都ホテルの1203号室の前に立ちドアをノックした。
しばらくの沈黙の後ドアが開き、さくらが顔を出す。
中に入りドアが閉まると、昴は思わずさくらを抱きしめた。
「心配しました…」
さくらは昴の胸に顔を埋めたまま、こくりと頷いた。手はしっかりと昴の背中に回しお互いの体温を確かめ合う。
そんな二人の様子を、藤枝は寂しそうに微笑んで見ていた。
しばらくして昴は視線を藤枝に移すと、
「初めまして。冲矢昴と申します」と挨拶をした。
「藤枝俊政です。あなたはこのお嬢さんの恋人さんですか?」
「ええ。そうです。東都大学工学部の大学院生です」
「ほう…なかなか優秀だ。しかし堅気の大学院生がこんなことに首を突っ込んで…」
そこまで言いかけて、藤枝が口ごもる。
「いや、ただの院生ではないですね。俺は鼻が利く方でね。
君からは俺たちと同じ匂いがする…。まあいい。ラスティーの恋人さんだ。信じてますよ」
そう言って藤枝は笑顔を見せる。
(さすがに鋭いな)
昴は片方の口角を持ち上げた。
「で、さくら。あなたが考えている作戦を聞かせてもらっても良いですか?」
昴の言葉を聞いて、さくらはうなずいた。
『藤枝がラスティーの身柄を拘束し情報を聞き出そうとしていると、オドゥムに伝えます。
私を拘束して暴行している動画でも送れば信じるでしょう』
さくらはサラサラとノートに作戦を書きだしていく。
『それで交換条件を出すの。
ラスティーから情報を聞き出す代わりに、エミリーの遺骨と遺品を確実に日本(ここ)まで届けさせるのよ。
今はまだ、どちらもK国にある可能性が高いから』
「なるほど。こちらが危険を冒さず、できるだけ近くまでエミリーを連れて来てもらう算段ですね」
さくらが笑顔を見せる。
『目の前でラスティーの息の根を止めてやるとでも言って、奴らをおびき出す。
もちろん遺骨が本物かどうか、確かめてね』
さくらは次々と作戦を説明していく。
エミリーの遺骨が奪われたと知ってからそんなに時間は経っていない。
それなのにここまで考えているとは…。
藤枝は舌を巻いた。
「君はいったい何者なんだ」
思わず心の声が口から出てしまった。
『組織の諜報活動担当ってだけよ』
ノートに走り書くと、さくらはいたずらっぽく笑った。
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作者名:aki | 作成日時:2019年11月18日 13時