奪われた恋人3 ページ35
午後になって、博士の家から工藤邸に電話がかかってきた。
少年探偵団が謎解きをしているので、昴にも来て欲しいそうだ。
りおは少し痛みがあり、体調も優れなかったので家で留守番をしていることにした。
「それでは博士の家へ行ってきますね。すぐ戻りますから、ゆっくりしててください」
そう言い残して昴は出かけて行った。
一人になったりおは、ソファーでクッションに体を預け、横になっていた。
痛み止めを飲んだので若干眠気もあり、ウトウトとまどろんでいた。
木の葉が風に揺れ、太陽の光がキラキラしているのをボンヤリ見ていた。
昴が出かけて十数分は経っていただろうか?
スマホに1件のメールが着信した。
スマホに手を伸ばし、送り主を見たが知らないアドレスだ。
本文を開けてみる。
それは藤枝からのメールだった。
エミリーの訃報を知った際、何も知らないで暴力を振ってしまったことへの謝罪の言葉がつづられていた。
(えっ…なに? どういうこと?!)
さらにはFBI捜査官行方不明事件の事、そして遺骨が強奪されたこと、遺骨を返す条件がエンジェルダストの情報とラスティーの命だということまで書かれていた。
『エミリーの遺骨が強奪された?!』
その事実にりおは驚く。メールを見れば事件が起こったのは昨日と記されている。
FBI捜査官の事件だ。昴が知らないわけがない。
おそらく安室も風見もみんな知っているはず。自分の体調を考慮してみんな黙っていたのだろう。
その気持ちは嬉しかったが…エミリーの遺骨が奪われたことはショックを受けた。
だが泣きたいのに涙が出ない。本当は叫びたいのに声が出ない。
悲しみも悔しさも外に吐き出せない。
ただただ苦しさだけが積もっていく。
胸の奥が痛い。
(ぅッ…く…!)
グッと苦しさと痛みに耐える。こうやって苦しさにフタをすることを覚えて、もうどれくらい経つのだろう…。
ブランケットを強く握りしめ、負の波が治まるのをジッと待った。
どれくらいかして少し落ち着くと、りおはそっと立ち上がる。
薬を服用したので腹部の痛みは先程よりラクになっていた。
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作者名:aki | 作成日時:2019年11月18日 13時