エミリーを藤枝に２ ページ30
りおは、藤枝にエミリーの日記だけでも渡せないかと手を尽くしていた。
安室が病院潜入時に仲良くなった警備員と連絡が取れないかと考え、安室にメールをした。
その日の夕方、警備員と連絡が付いたこと、身元引受人がおらず、エミリーの遺体は病院の
霊安室に安置されたままで、遺品も病院で預かっていると返信が来た。
エミリーが亡くなった今、オドゥムにとって藤枝は糸の切れた凧同然だ。
このまま放置するのか、それとも邪魔者として消すのか。
どちらに舵取りをするのか、りおは読めずにいた。
答えを出せないまま夜になる。
昴はりおが悩んでいる様子に気付いていたが、あえて黙っていた。
赤井が入浴を済ませ自室に入った時、時計は夜中の１２時を回っていた。
ベッドに入って本を読んでいるとドアのノックされた。
「どうぞ」
声をかけると、ドアを開けてりおが顔を出した。
『入っても良い？』
唇の動きだけで伝える。
「ああ、もちろん」
赤井の返事を聞いて、りおはそっと部屋に入りドアを閉めた。
「りおが俺の部屋に来るなんて初めてじゃないか？」
そう言われてちょっと考えたりおは『そうかも！』 と小さくうなずいた。
上半身を起こした赤井のそばへ行き、ベッドサイドに腰を下ろす。
「どうした？ 眠れないのか？」
赤井は優しく声をかけた。
『実は…相談したいことがあるの』
「ほー。やっと相談相手として格上げされたみたいだな」
赤井がふざけて言うので、りおは『もう！』とつついた。
「ははは、すまんすまん」
赤井は笑いながらりおの手を掴んで引き寄せる。
「それで？ 何を悩んでいるんだい？」
頬を膨らませたりおが、赤井を見上げた。
『エミリーの遺体は身元引受人がいないために、病院の霊安室に安置されたままなの。
彼女が亡くなった今、藤枝はオドゥムにとって用済み。
だから、藤枝をＫ国へ身元引受人として行かせるべきかどうか悩んでいるの』
りおはゆっくりとした手話で赤井に語りかける。
『彼らが用済みの藤枝を放置するのか消すのか、読めずにいるの』
「そうか…」
赤井は少しだけ考え込んだ。
「相手の出方が分からない以上、行かせるべきではないだろう」
『うん、私もそう思う。でも…このままではエミリーが…』
悲しげに下を向くりおの顔を赤井は見つめる。
エミリーは重要参考人としてFBIでもその動向を探っていた人物だ。
それ故、彼女の訃報はFBIもキャッチしていた。
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作者名：aki | 作成日時：2019年11月18日 13時
