ベルモットの忠告3 ページ13
コール1回…2回…3回…
「安室です」
相手が電話に出る。昴はわずかに緊張した。
「冲矢です。安室さん、今大丈夫ですか?」
冷静を装い、いつも通り語りかけた。
「ええ。どうされたのですか? あなたが僕に電話なんて珍しいですね」
「ええ。まあ。さくらの事でお聞きしたいことが」
「さくらさんの?」
安室の声がわずかに強張る。
「じつは…二日前からさくらが行方不明なんです。安室さんは何かご存知ないかと」
「どうして僕に? 冲矢さんが知らないのに」
そう言われると返す言葉もない。
しばらくの沈黙の後、安室が察したように口を開いた。
「組織のアジトに彼女がいるかどうか、僕に調べて欲しい…ということですか?」
「ええ。あなたにしか頼めませんから」
「どうして彼女は、あなたの前から姿を消したのですか?」
「それは…」
安室の質問に、昴は答えることができない。
「僕との仲を疑った…とか?」
こちらは『さくらが居ない』ことくらいしか
話していないのに、こうも確信を突いてくるのはさすがと言うべきか。
「彼女を傷つけたのか?」
安室が低い声で問いかけた。
「最初に彼女を傷つけたのはあなたですよ。安室さん」
「それは否定しない。だが、なぜあなたが彼女を傷つける必要がある?
彼女が必要としているのはあなたなのに。今回もK国での事は相当堪えているはずだ。
なのになぜ…」
そこまで聞いて、
「ちょっと待ってください。いったいK国で何があったんです?
確かに泣いたような跡はありましたが…」
昴が問いかけようとしたところを、遮るように安室が言葉を発した。
「さくらさんが行方をくらませた理由が分かったような気がします。
K国で何があったかも知らないまま、僕に嫉妬してさくらさんを問い詰めた…
といったところですか?」
まさにその通りだ。返す言葉もない。
沈黙は肯定と受け取ったのか、安室は大きなため息をついた。
「とにかく、組織のアジトに確認に行ってきます。
その報告も含めて、K国で何があったかもメールで送ります。
駅で別れた時かなり咳をしていましたし、声もだいぶ掠れていました。
あなたに十分な説明が出来なかったのも事実でしょう」
「助かります」
昴は素直に礼を言った。
また連絡します。
それだけ言うと電話は切れた。
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作者名:aki | 作成日時:2019年11月18日 13時