空を見上げて風を感じて1 ページ18
カ
カンカンカンカン…
階段を登る昴の音が響く。
やがて屋上にたどり着き、あたりを見回した。
「ッ?!」
コンクリートの地面に、血の付いたナイフが落ちていることに気付いた。
嫌な予感がする。
周りに気を配りながら先に進むと、スコッチが事切れたその場所にさくらが倒れていた。
「さくら!!」
敵がいないことを確認し、慌てて駆け寄り抱き起こす。
「さくらッ! しっかりしろ!」
2日ぶりに見たさくらの顔は、ゾッとするほど青白い。
「ッ!!」
さくらを抱き起した左手にぬるりとした感覚を感じる。
気付けば、さくらのまわりは血で染まっていた。
数十分後———
昴は手術中のランプの前で待たされていた。
昴のジャケットは、さくらの血がいたるところに付いて乾いている。
バタバタバタバタ!!
やがて忙しない二人分の足音が近づいてきた。
「昴くんッ!」
「さ、さくらさんの容態はッ?」
ゼイゼイと息を切らした博士と、取り乱した哀が昴に駆け寄った。
「まだ…わかりません…」
昴は力なく答えた。
「何でこんなことに…」哀は絶句した。
程なくして捜査一課の面々が病院に来て、現場の状況を詳しく説明してくれた。
さくらが何者かに襲われ、応戦したこと。
相手が不利になったと感じ、屋上から飛び降りたようだと聞かされる。
問題はその襲った男が何者か…だ。
現在総力を挙げて身元を調べているという。
「さくらさんが襲われる心当たりは?」
高木刑事が昴に問いかける。
「さあ…。彼女は大学の職員ですし、特に誰かに恨まれるようなことは…」
「そうですか…」
当たり障りのないことを言って、その場を切り抜ける。
正直、こんなことをしている気分では無かった。
『手術中』の赤いランプが消えて間もなく———
手術を終えた医師が出て来た。
「幸い内臓まで傷が達していなかったので大事には至りませんでした。
ですが出血が多かったので、しばらく安静が必要です」
医師はそれだけ説明すると手術室を後にした。
取り残された昴達は、手術が終わってベッドに寝かされたさくらと一緒に、ナースステーションに近い個室へと移った。
刑事事件の被害者ということで、警察が警備をしやすい個室を用意してくれたようだ。
大事に至らなかったとは言え手術を終えた直後だったので、酸素マスクにモニター、点滴に
繋がれたさくらの姿は痛々しかった。
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作者名:aki | 作成日時:2019年11月18日 13時