刺客2 ページ15
安室との電話から2時間ほど過ぎた頃、昴の元に1通のメールが届いた。
りおはアジトの自室で、ここ二日間ギムレットのレポート探しをしているとわかり、昴は胸を撫で下ろす。
さらにK国での事がメールには詳細に記されていた。
そしてメールの最後にはこんなことが書かれていた。
『苦しい胸の内を吐き出すこともできず、さくらさんはずっと強い風の中に佇んでいました。
そして空を見上げていました。
さくらさんの心の中は、あなたでいっぱいだった。
僕の入る余地なんて、これっぽっちも無いくらいに…』
メールを読んで、昴は死ぬほど後悔した。
傷ついて帰ってきたのに、労わるどころか逆に傷つけてしまった。
今はただ会いたい。会って謝りたかった。
そして安室のメールには追伸があった。
『追伸
彼女は頭を冷やしてくると言って部屋を出て行きました。
もしかすると《スコッチ》に会いに行ったのかもしれません』
スコッチに…?
しばらく考え、ハッと思い当たった。
昴は上着を手に取ると、すぐに工藤邸を出て行った。
***
さくらはとあるビルの屋上にいた。
一部黒っぽく変色したコンクリート部分に跪く。
愛おしそうに、変色した部分に触れた。
(ヒロ先輩…)
さくらの涙が一粒、二粒、ポタポタとコンクリートの上に落ちる。
雫が落ちた所は色がすぐに変わった。
『男はその気になれば、あなたを自分のものに出来るんですよ』
冷たく言った昴の言葉が蘇る。
そう言わせてしまうほど、彼を不安にさせたのは自分だ。
藤枝についた嘘に耐え切れなくなって、安室に抱きしめられ、すがって泣いたのも事実。
それに後ろめたさがなかったわけじゃない。
でも、赤井に対する気持ちに嘘偽りは全くない。
ただそれを、言葉にして伝えることが出来なかった。
さくら自身も感じていた。日増しに声が出にくくなっていくことを…。
私はどうしたら良いの?
どうすれば良かったの?
考えれば考えるほど、答えは闇の中に沈んでいった。
その時———
「ッ!!」
ものすごい殺気を放つ男が、さくらめがけてナイフを振り下ろした。
さくらはとっさに避ける。
「何者?」
身構え、相手の様子を伺う。
「ラスティー…よくも我々のジャマを!」
そういって男は次々とナイフで攻撃を仕掛けてくる。
その全てをさくらはかわした。
だがその男がかなりの訓練を受けてきていることはすぐに分かった。
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作者名:aki | 作成日時:2019年11月18日 13時