エピローグ２ ページ50
《エンジェルダスト》や《ギムレット》といったキーワードは、公安的配慮によって世に出ることは無かったが、それ以外はニュースなどで大々的に発表された。
これにより黒の組織は「エンジェルダスト」から完全に手を引き、安室さんやさくらさんに情報漏えいの疑いがかかる事も無かった。
「ところでさぁ」
コナンが水やりを始めたさくらを見上げて訊ねた。
「ギムレットのマスターレポートはどこに行っちゃったんだろうね」
結局サカモトケンジ達もレポートにはたどり着けないまま死んだ。
「う〜ん。これは私の推測だけど…。たぶん、ギムレットはレポートを隠したんじゃなくて、削除したんだと思う。
自分の頭の中には全て入っているわけだし、自分以外の人には作らせたくなかったんじゃないかなぁ」
さくらはシャワーのように出る水を眺めながら続けた。
「彼が設定した爆発の日付ね、昴さんから聞いたんだけど、あの日はギムレットの恋人の命日だったんだって」
「ええ？！」
コナンは、ギムレットに恋人がいた事にも、その恋人が亡くなっていることにも驚く。
「強盗の流れ弾に当たって亡くなったらしいの。彼は人間兵器を作りたかったわけではなく、弾丸に当たっても死なない薬を作りたかったのかな…。
薬は出来たけど、恋人が帰ってくるわけじゃない。
自分が思っていた以上に恐ろしい薬だって、気付いていたんだよ」
コナンは黙ってそれを聞いていた。
さくらはギムレットの恋人の写真を、赤井から見せてもらったときのことを思い出す。
瞳は自分と同じアンバーだった。
資料には「加奈子」と名が記されていた。
「ギムレットはお前の瞳の色を見て、恋人を重ねていたのかもな。
遠くに行った恋人を、今度こそ自分の物にして決して離さない。
その思いが狂った方へ進んでしまったが…」
加奈子の写真を見ながら、そう呟いた赤井の言葉が忘れられない。
「だから自分に何かあったら、その全てを灰にしようと思ったんじゃないのかな。
恋人が亡くなった命日に。
薬の存在意義がなくなった日…だから」
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作者名：aki | 作成日時：2019年8月28日 15時
