ペリドットとアンバーvol.３【名探偵コナン】【赤井秀一】【安室透】 (ページ22)

今日:8 hit、昨日:20 hit、合計:192,153 hit

アンバーの絶望１ページ22

　点滴を終え、二人は工藤邸に帰ってきた。
朝早く出かけたので、時刻は午前１０時を過ぎたところだった。

　りおは車の中でもぼんやりしていた。
家に着くとソファーに倒れこむ。
「疲れましたか？」
ジャケットをハンガーにかけながら昴はりおに声をかける。

　「ううん。ただ…」
「ただ…どうしました？」
昴はソファーに近づく。
「何でもない」
ちょっとだけ赤い顔をしてりおは顔を背けた。
「隠し事はしない約束ですよ」
昴はりおの肩に手を置く。
しばらく黙っていたが、りおは小さな声で
「秀一さん不足です…」と呟いた。
　

　そういえば、ここ数日赤井の姿では会っていなかった。
朝も変装してから「おはよう」と挨拶していたし、夜はりおが部屋に入ってから入浴していた。
「随分可愛らしい事を言ってくれますね。でも今は沖矢昴なので妬けますね」
軽口を叩きながら、りおの隣に腰を下ろし抱きしめる。
「私では役不足ですか？」
なんて白々しいセリフを口にした。
自分がすごくわがままを言っているみたいで、りおはなんだか悔しかった。
昴の背中に手を回す。

　「今はこれで我慢しておきます」
負けじと憎まれ口を叩いた。
「『これ』ってひどいですね」
昴はクスクス笑いながら、そっと頭を撫でてやる。
「温かい…」
りおはそう呟いて、タバコの香りが僅かにする昴の胸に顔を寄せる。
そのまま眠ってしまった。

　次に目を覚ますと、ソファーで昴といわゆるお昼寝をしている状態だった。
そっと動いたつもりだったが、その気配に昴も目を覚ます。

　「スミマセン。いつの間にか私も眠ってしまいました」
メガネを外し、目をこすりながら昴が言った。

「少しは充電できました？」
再びメガネをかけた昴が声をかける。
「はい」
りおが笑顔で答えると、
「沖矢昴でも良いのか…。ちょっと複雑だ」
と、顎に手を当てて赤井の声で言うものだから、りおは盛大にふいてしまった。
ああ、りおは笑った顔が可愛いな…、と昴は思ったが、口に出すと照れてその笑顔が見られなくなると思い、黙って微笑んだ。