お前がいるだけで1 ページ41
***
数日後——
「ラスティーは今日退院だって?」
ホテルのライティングデスクにノートパソコンを置き、後ろを振り返ったアロンがベルモットに問いかけた。
「ええ、そうみたいよ。バーボンから連絡があったわ」
一度くらい見舞いに行きたかったな〜、と言ってアロンは前を向くと、両手を頭の後ろで組んだ。
「あらあら、彼氏と水入らずでいるのにジャマするような事するわけ?
それに元々あの子は組織から離れて、心の治療をしてたのよ? 私達とは会わないに越したことは無いわ」
窓際に置かれた応接セットで、優雅にコーヒーを飲みながらベルモットが答える。
「それよりどうなの? リュ・スンホのお陰で計画が遅れ気味よ。ジンがイライラしてるわ」
「ん〜。あちらの実験結果のデータは問題ないみたいだよ。もちろん、実用化にはもう少しって感じらしいけどね。
やっぱり必要なデータは【あの場所】にしか無いんだろうなぁ」
パソコン画面を見ながらアロンがイスを揺らす。
「【あの場所】って、例のアメリカの?」
ベルモットは視線だけをアロンに向けた。
「ああ。アメリカは《彼》と同じ実験を大昔にやってたからね。人間が考えることは今も昔も、さほど変わらないって事だね」
話をしながら、アロンはキーボードをカタカタと操作した。
「つまり、こちらの実験より、アメリカのデータの方が進んでるってこと?」
ベルモットがさらに問いかける。今回のビジネスの中枢メンバーではあるが、詳しいいきさつなどは聞かされていない。
「そりゃそうだよ。昔とはいえ、アメリカが莫大な予算をかけて研究してたんだ。《彼》の実験とは規模が違う。
しかし実験を進めるうちに、それがとても恐ろしいものだとアメリカは気付いた。
研究していた【ブツ】はほぼ完成していたが、全てを国家機密として封印したんだ」
ふ〜ん、とベルモットは曖昧な返事をした。
「そんな恐ろしいものを、組織は自力で復活させようとしてるのね?」
「そうさ。俺たちは、世界のパワーバランスが変わるかもしれない【禁断の果実】を手に入れようとしているのさ」
そう言って笑うアロンの顔は、心なしか恐怖の色が浮かんでいた。
35人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
aki(プロフ) - はちみつさん» はちみつさん、お久しぶりです♪そしてありがとうございます!思惑通りハラハラして頂いて嬉しいです(笑)ひとまず、完結を目指してラストスパートです〜。今後ともよろしくお願いします♪ (2022年6月5日 17時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
はちみつ(プロフ) - こんにちは!8章もお疲れ様でした!主人公ちゃんがいない間、わたしもハラハラしながら更新待ってましたっ。これからも楽しみにしてます!ひとまず章の完結お疲れ様です!! (2022年6月5日 16時) (レス) @page50 id: 47bbcb1aa7 (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - あんなさん» あんなさん!お久しぶりです♪楽しんで頂けて嬉しいです〜。赤井さんがどれだけ夢主を愛しているか…って事を書きたくて、このような展開になってしまいましたw泣かせてごめんね、赤井さんって感じですwwwこの後も楽しんで下さいね〜! (2022年5月21日 13時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
あんな - お久しぶりです!毎日、このお話を読むのを楽しみに帰宅しています!夢主、無事で良かった…!赤井さんが泣くところはいつも胸が締め付けられるように痛いです。こちらまでが涙を誘われてしまいました。これからも応援しています! (2022年5月21日 12時) (レス) id: 8be13c14ce (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - ttakedasaki0906さん» そう言って頂けると決心が揺らぐww とりあえず、とても長いお話になってしまったので一旦完結します。きっとまた書きたくなると思うので、その時はまた! 短編のストーリーラインもちょっとずつ書いているので、そちらもお楽しみに! 応援ありがとうございます♪ (2022年5月19日 15時) (レス) id: 9e9b5250f1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:aki | 作成日時:2022年4月18日 12時