帰ってきて5 ページ30
ふと、ダイニングに置かれた車のキーに、赤井の視線が向く。先日ジョディが使って、そのまま置きっぱなしになっていたものだ。キーに付いている小さなチャームをジッと見つめる。
『離れてしまっていても、この空を見るたびにあなたと私は繋がっている』
『ターコイズは昔、旅の安全を願うお守りだったんだって。危険な仕事をする二人に、ボクからのプレゼント』
いつか聞いたりおの想いと、お揃いのチャームを貰った時の、コナンの言葉が頭をよぎった。
そして、つい最近りおと交わした約束も——
『あなたの生まれ育ったイギリスも、あなたがFBIを目指したアメリカも、私の仲間が眠るマレーシアも…。
いつか、全てが終わったら…一緒に見に行きましょう』
『これからもたくさん…あなたとの約束事を作るの。どんなにピンチになっても〈約束を守ろう〉と思えば、生きて帰る事を諦めないでしょう?』
りおは海に落ちる直前、諦めてしまったのだろうか。自分(赤井)と共に生きる未来を——
ターコイズのチャームを見つめ、赤井は唇を噛んだ。あの日あの場に居た人々を守る為、りおは決死のダイブをした。
自分の命と引き換えに……。そう考えて赤井は首を横に振った。
あの約束は、言葉は、全部嘘だったのか?
赤井はやり切れない思いで、固く握った拳を再びテーブルに打ち付けた。
『昴さん!』
「ッ!」
その瞬間、何かが脳裏をかすめた。
スンホとりおが海に落ちる直前——りおが自分に向かって、何かを言って微笑んではいなかったか。
(あの時、間違いなくりおの唇は動いていた……俺に何か言っていた!)
赤井は両手で頭を抱えた。
思い出せ! あの時、りおは俺に何と言ったんだ?
ギュッと目を瞑り、当時の事を振り返った。
デッキにいるたくさんの客
威嚇射撃をしたスンホ
楽しい休日が悪夢に変わった瞬間の客の顔
息を乱さぬスンホ
危機的状況の中、二人の連係プレー
互いの無事を確認した時の、りおの体温
そして——
倒したはずのスンホが自爆しようとした。それを止めに入ったりおが、羽交い絞めにされて——
『必ず生きて帰る』
「ッ!!」
声は無かったが、確かにりおの唇はそう動いていた。
痛みと、そしてその後の出来事が余りにもショッキング過ぎて、今の今まで忘れていた。
「あの時、りおは何か勝算があって、あの行動を取っていたとしたら……」
赤井は思わず立ち上がる。ちょうどその時、工藤邸の前に一台の車が停まった。
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aki(プロフ) - はちみつさん» はちみつさん、お久しぶりです♪そしてありがとうございます!思惑通りハラハラして頂いて嬉しいです(笑)ひとまず、完結を目指してラストスパートです〜。今後ともよろしくお願いします♪ (2022年6月5日 17時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
はちみつ(プロフ) - こんにちは!8章もお疲れ様でした!主人公ちゃんがいない間、わたしもハラハラしながら更新待ってましたっ。これからも楽しみにしてます!ひとまず章の完結お疲れ様です!! (2022年6月5日 16時) (レス) @page50 id: 47bbcb1aa7 (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - あんなさん» あんなさん!お久しぶりです♪楽しんで頂けて嬉しいです〜。赤井さんがどれだけ夢主を愛しているか…って事を書きたくて、このような展開になってしまいましたw泣かせてごめんね、赤井さんって感じですwwwこの後も楽しんで下さいね〜! (2022年5月21日 13時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
あんな - お久しぶりです!毎日、このお話を読むのを楽しみに帰宅しています!夢主、無事で良かった…!赤井さんが泣くところはいつも胸が締め付けられるように痛いです。こちらまでが涙を誘われてしまいました。これからも応援しています! (2022年5月21日 12時) (レス) id: 8be13c14ce (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - ttakedasaki0906さん» そう言って頂けると決心が揺らぐww とりあえず、とても長いお話になってしまったので一旦完結します。きっとまた書きたくなると思うので、その時はまた! 短編のストーリーラインもちょっとずつ書いているので、そちらもお楽しみに! 応援ありがとうございます♪ (2022年5月19日 15時) (レス) id: 9e9b5250f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aki | 作成日時:2022年4月18日 12時