襲撃〜前編〜1 ページ44
土曜日——
組織の構成員でもある男が経営するホテル。
そのホテルのカフェでアロンとさくらは待ち合わせた。
「へ〜ぇ。ココのオーナーが組織の…。噂には聞いていたけど」
さくらはカフェを見回す。東都では老舗の高級ホテル。外観は『大正時代』を感じさせる佇まいで、出入口にはガス灯を模した街灯がいくつも並ぶ。
内装にもこだわりがあるようで、伝統的な和の様式と海外から入ってきた文化が融合した、まさに和洋折衷のホテルだった。
このホテルのオーナーが自分たちの組織に所属しているらしい、と聞いたことはあったが実際入るのは初めてだった。
「あ、そんなジロジロ見ないで。安全な店を知りたくてウォッカに教えてもらったんだけど、あんまり人に言うなって釘を刺されたんだから……」
やや困り顔をしたアロンが、さくらに向かって注意した。
「ハイハイ…」
さくらはつまらなそうに返事をすると、それ以上の詮索を諦めた。
席につき、アロンが手を上げウェイトレスを呼ぶ。それぞれオーダーをすると、さくらは改めでアロンの顔を見た。
どこからどう見ても、『アロン=ダリル』だとは思えない。『昴=赤井』のように、特殊なメイクをしているわけでもないのに。
物珍しそうにアロンの顔を眺めていた。
「そ、そんなに見つめられると照れるなぁ…」
アロンはわずかに頬を赤くして、水を一気飲みした。
「え? あ、ごめんなさい。全然印象が違うから、感心しちゃって……。
ベルモットのように変装術を使っているわけでもないのに、ここまで変われるなんて驚きよ。
で、あなたから話が有るのよね? なあに?」
さくらが笑顔で問いかけると、アロンの顔が一気に真面目になった。
「話というのは僕の先代のことさ。ずいぶん君を気に入っていたようだったから。
僕の先代は君も良く知っている、組織の爆破担当《カーディナル》。
実は彼が亡くなる数日前にね、電話で話したんだよ。まるで恋してるみたいに、君の事を話していたんだ。いい年をしたおじさんが…って笑っちゃうだろ?
組織の幹部で『暗殺』や『破壊』を担当していたけど、彼は誠実だったし優しい人だった。その彼が最期に恋した人と会ってみたかったんだ」
33人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
aki(プロフ) - iwaさん» iwaさん、メッセージありがとうございます♪大好きって言ってくださる方がいるだけで、すっごく嬉しいです。前は一喜一憂してましたけど、今はただ、好きな小説を書いて、喜んでくださる方がいて、それだけで幸せです。ご期待に添えるよう、これからも精進します! (2022年4月22日 19時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
iwa(プロフ) - 初めまして。星が少ないようですが私は大好きです。色など気にせずに!楽しませていただいてます! (2022年4月22日 16時) (レス) @page50 id: 6d6a6077d0 (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - はちみつさん» あけましておめでとうございます♪︎はちみつさん、お久しぶりです〜!コメント嬉しいです〜〜!今年もただのラブではない、唯一無二の二人を書いていきますよ〜。よろしくお願いします♪︎ (2022年1月1日 14時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
はちみつ(プロフ) - こんにちは!そして、あけましておめでとうございます!毎日楽しく読ませていただいています!夢主ちゃんと赤井さんの信頼関係がたまりません…!今年もよろしくお願いします! (2022年1月1日 13時) (レス) @page43 id: 47bbcb1aa7 (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - あんなさん» あんなさん、ありがとうございます♪最近は閲覧数も減っているのでコメント頂けると本当に嬉しいです〜!長いお話で読むの大変ですよね。でもちゃんと最後まで形にしますので、もうしばらくお付き合いくださいね。良い年をお迎えください。 (2021年12月31日 19時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:aki | 作成日時:2021年11月20日 12時