Lunch Box６ ページ43
「はぁ…。仕方ないな……」
昴は早々に抵抗を諦めた。こうなれば抵抗したところで無駄に時間を取られるだけだ。
(さっさと見せてジョディに味見をさせたら部屋を出よう)
昴は大きなため息をついて、体の力を抜いた。
＊＊＊
夕刻——。
「ただいま〜」
工藤邸の玄関にりおの声が響く。
「おかえりなさい」
昴が出迎えてくれた。
ただちょっと元気が無いようにも見える。
「昴さん、どうしたの？ 疲れてる？」
りおが心配そうに昴の顔を覗き込む。
「あ、いいえ。大丈夫ですよ」
一瞬だけハッとして、昴が笑顔になる。いつも通り玄関でハグをして、昴はキッチンに戻っていった。
「？」
やや違和感を覚えつつ、りおは洗面所へと向かった。
手洗いを終え、空になった弁当を持ってりおがキッチンへ行くと、昴が鍋の前で味見をしていた。
シンク横の食器かごには、キレイに洗われた弁当箱が伏せてある。
「あ、お弁当食べたのね！ どうだった？」
りおは自分の弁当をシンクに出しながら昴に問いかけた。
「え、ええ……美味しかった…ですよ」
どことなく仰々しいというか、バツが悪そうな感じで昴が答えた。
「……そう。それは良かった」
やはり先ほどの違和感を拭えぬまま、りおは弁当を洗い始める。
「いんげんとニンジンの肉巻きはどうだった？ あれ、秀一さん好きでしょ」
「え、ええ。美味しかったです」
(それはジョディとキャメルが食べたがな)
「小松菜の胡麻和えは味濃くなかった？」
「いえ、ちょうど良かったと思います」
(それはブライアンとジャックが気に入ってたよ)
「卵焼きの味付けはどう？」
「ええ。良かったです」
(ジェームズが大絶賛してた)
「ニンジンのサラダは？」
「いつも通り美味しかったですよ」
(ビリーとクリスがレシピ知りたがってたよ)
「雑穀米は少し塩を振っておいたから、冷めても美味しかったでしょ」
「ええ。とても良かったです」
(ご飯も残さず食べてたよ。みんなが)
りおの質問に昴は愛想良く答えるが、心の中では別の回答をしている。
実のところ昴は弁当を一口も食べていない。
全てFBIの仲間に食べられてしまったのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 42人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
aki(プロフ) - あんなさん» こちらこそありがとうございました！おばちゃんに怒られる昴さん…とかちょっと笑える姿も入れつつ、結局夢主ちゃん大好き昴（赤井）さんを意識しました。楽しんで頂けて良かったです〜！ (2021年10月6日 18時) (
レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
あんな - 今回のお話もとっても面白かったです！アレルギー反応というのは想像もしてみませんでした！昴さんも安定のかっこよさでした(*ﾉωﾉ)ありがとうございました！！ (2021年10月6日 16時) (レス) id: 8be13c14ce (このIDを非表示/違反報告)
あんな - 全然大丈夫です！友達と話していて盲腸の話があがったとき、もしかしたらかっこいい秀一さんがみれるかも？？と思っただけなので（笑） (2021年9月30日 16時) (レス) id: 8be13c14ce (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - あんなさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。（涙出る〜…）あ、そうだ。一つだけ…。体調不良…盲腸ではなくなってしまいました…。理由は最終話のあとがきで述べますが、そこだけご承知おきくださいませ<(_ _)> (2021年9月30日 9時) (レス) id: 9e9b5250f1 (このIDを非表示/違反報告)
あんな - akiさん» こんにちは！ありがとうございます！！akiさんのお話はどんなものでも大好きなので、心配なさらないでください！！楽しみにしています(≧▽≦) (2021年9月29日 15時) (レス) id: 8be13c14ce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：aki | 作成日時：2021年4月17日 15時
