ペリドットとアンバーvol.2【名探偵コナン】【赤井秀一】【安室透】

ペリドットの愛情５ ページ9

さくらと赤井の攻防はしばらく続いた。
少し冷静になれたところで、ようやくさくらと顔を合わせた。

「やっと見せてくれましたか…」
さくらが拗ねたように言った。
「あんなこと言うさくらが悪い…」
「あんなこと？」
どうやら全くの無自覚らしい。

　「さくら、俺だって人間なんだよ。
好意を持ってる女に例え瞳であっても『大好き』なんて言われたら…」
そこまで言ってふいっと顔を背ける。
そしてさっきより小さな声で
「…照れてしまうんだ…」

以前の印象とまるで正反対の赤井を見て、さくらは微笑む。
そのまま赤井の体に抱きついた。
「そんな秀一さんが大好きです」
「お前、全然わかっていない」
「わかっていますよ」
「じゃあ、面白がっているだろう」
「バレました？」
嬉しそうにさくらが笑う。

　「ごめんなさい。でも嬉しくて。こんな秀一さんは私しか知らない」
「そうだな…。お前しか知らないよ」
さくらの笑顔を見て、赤井も微笑んだ。



　変装をしてくると伝え、洗面所に入る。
今日は新出先生が往診に来る。
薬が効いたのか、風邪の方も快方に向かっているようだ。
夕べと今朝のやり取りを見る限りでは、少しずつさくらも明るさを取り戻している気がする。
今日はPTSDの治療をするのだろうか。
新出の言葉を思い出し、赤井はふぅ…と小さく息を吐いた。



　こほっ！こほっ！

　まだ咳は出るが、昨日よりはだいぶ良い。
さくらは窓際に近づきカーテンを開けた。今日は昨日と違って天気が良いようだ。
客室のドアを開けて廊下に出る。
朝食の準備は出来るかな？ 温めるだけなら…。

　とりあえず客室を出てキッチンに入る。
冷蔵庫には昨日博士たちが持ってきてくれたお粥やキッシュ、具だくさんの野菜スープが
入っていた。
スープはコンロにかけて温めて…。キッシュはアルミホイルに包んで、オーブンで
軽く温めよう。そこまでは体も問題なく動いた。

　お皿とスープカップを探していたとき、軽くめまいがした。これはちょっとマズイ。
そう思ってコンロの火を止め、リビングにゆっくり戻る。
ソファーまでたどり着いて倒れ込んだ。
呼吸を整え、めまいが治まったところで体を起こす。
これ以上は本当に心配をかけたくない。
(めまいも治まったし秀一さんには黙っていよう…)
だが客室に戻る余力はない。
このままソファーに座って昴を待つことにした。

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