忍び寄る魔の手1 ページ42
そんな穏やかな雰囲気を壊すようにゆっくりとさくらの部屋のドアが開いた。
殺気を感じ、さくらは一瞬で状況を察知する。
さくらの息を飲む音を昴は聞き逃さなかった。
「さくら?」
安室も部屋に仕掛けた盗聴器から、誰かが部屋に入ってきた事を察知する。
「やっと見〜〜つけた〜〜〜〜」
インカム越しに背筋にゾクリと寒気が走るような男の声が聞こえた。
「さくら? さくら!!何があった?!」
昴は声を掛けるが今、彼女は声が出ない。
安室は慌てて車外に飛び出し、ラボの庭先に回る。
インカムからは部屋の中で争う音が響いていた。
部屋に入ってきたギムレットは、さくらに襲いかかる。
ベッドに向かってきたところをさくらは身を翻してかわすと、置いてあった点滴スタンドはギムレットがぶつかった衝撃で倒れた。
ガチャーンッ!!!
大きな音が響く。
ギムレットはそのスタンドを手に持つと、さくらめがけて振り下ろした。
上手くさくらがかわしたため、それは空を切って床を叩く。
すると衝撃でスタンドはグニャリと半分くらいに曲がってしまった。
さくらは凍りつく。
『あなた、まさか…エンジェルダストを?!』
曲がったスタンドを振り回しながら、ギムレットはさくらを追い詰めていく。
そのうち大きな音に気がついた医療スタッフたちが何事かとやってきた。
スタッフがドアを開けた瞬間———
ギムレットはスタンドで医療スタッフを殴り倒す。
次々と悲鳴が上がった。
「ッ!!」
その隙をついて、さくらは病室の窓ガラスを来客用の丸椅子で叩き割り、USBメモリの入った小さなバッグを持って窓から飛び出した。
ちょうどさくらが窓から飛び出した時、安室がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
さくらは安室に駆け寄る。
小さなバッグを手渡すと安室の耳元で掠れた声でささやいた。
「ギムレットがエンジェルダストを! 狙いは私よ。データをお願い!」
そう言ってすぐに安室から離れ、埠頭に向かって走り出した。
その直後———
ドゥォォオオオオン!!!
物凄い音があたりに響いた。病室の壁が壊されたのだ。
僅かに土煙が上がる。
そこに現れたのは、常軌を逸し、悪魔のような形相をした男が立っていた。
安室は彼の前に立ちはだかり行く手を阻むが、もはや、さくら以外は見えていないようだった。
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aki(プロフ) - コメントありがとうございます。そうですね。つらい場面が多いですね。その分闇を抜けたときの描写を大切にしてます。上手く伝わるか心配ですが…。明るい話も書きたくなって、実は番外編も近々アップする予定です。そちらもお楽しみに。 (2019年9月11日 19時) (レス) id: 19a1a08cff (このIDを非表示/違反報告)
iwa(プロフ) - 想像以上に重いのですが引き込まれます。赤井さんが好きで本当にこのお話に出逢えて良かった。 (2019年9月11日 19時) (レス) id: d46b647962 (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - ありがとうございます!凄く嬉しいです。この後も一波乱も二波乱もありますが、最後までお付き合い頂けると嬉しいです。 (2019年8月25日 15時) (レス) id: 19a1a08cff (このIDを非表示/違反報告)
さち - すごくおもしろいです。続きが早く読みたいです。よろしくお願いします。 (2019年8月25日 12時) (レス) id: 63b42929fa (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - 失われた声4から、赤井が本名で呼ぶようになりますが、基本二人きりの時だけです。シーンの中で本名と偽名が混在してしまったので、修正しました。ご承知おき下さい。申し訳ありません。 (2019年8月21日 13時) (レス) id: 19a1a08cff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aki | 作成日時:2019年8月5日 13時